◆凍結路面に迫るヘッドライト
鈴木昇さん(仮名・30代)は、雪が降った翌日の夜、車を走らせていた。道路は一見問題なさそうに見えたが、実際はところどころ凍結していたという。
「道路の黒く光っている部分は、ほぼアイスバーンでした。少しハンドルを切るだけで滑りそうでした」
運転に不慣れなこともあり、鈴木さんはいつも以上に神経を使っていた。
しばらくして、バックミラーに1台の車が映る。徐々に距離が詰まり、車間をほとんど取らない状態になった。
「エンジンのふかす音がして、急かされているようでした。正直、怖かったです」
◆カーブの先に見えた結末
それでも、鈴木さんは速度を上げなかった。
「ここで焦ってアクセルを踏んだら、自分が滑ると思いました」
後続車は“しびれ”を切らし、エンジン音を響かせて急加速。凍結した路面にもかかわらず、強引に追い越していった。
そのまま慎重に走っていると、少し先の緩やかなカーブ付近でハザードランプが点滅しているのが見えたという。
「近づいてみたら、カードレールに突っ込んでいる車がいたんです」
その車は、先ほどムリな追い越しをした車だったのだ。車体は斜めに傾き、路面にはタイヤが滑った跡が残っていたそうだ。
「さっきまで威圧的だったのに、言葉を失いました」
鈴木さんはそのまま走り続け、無事に目的地へ到着。
「到着した瞬間、体の力が抜けました。自分の判断は間違っていなかったんだと思えましたね」
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

