今週のテーマは「結婚願望がなかったはずの彼氏が、結婚を決めた理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:「結婚は考えられない」と言っていた彼氏から、プロポーズをされた女。勝因は?
自分でも、こんなクサいセリフを言う日が来るとは思わなかった。
高級ホテルのスイートルームを予約し、食事の後は部屋でバラの花束と共にプロポーズ…。でも女性はこういうのが好きだと友人から聞いたし、僕なりに精一杯の誠意を見せたつもりだ。
「加奈、待たせてごめんね。結婚しよう」
そう言ってひざまずきながら指輪の箱を開けると、加奈は「信じられない」と言わんばかりの顔で僕を見つめている。
交際して、2年になる加奈。
正直に言うと、交際当初、僕にはまったく結婚願望がなかった。
しかしどうして結婚する気になったのか?それは、意外と単純な理由だった…。
加奈と出会ったのは、友人の紹介だった。当時26歳だった加奈は、IT系の会社で営業をしており、ハキハキと話す感じが素敵だなと思った。
しかも加奈は可愛いだけではなく、しっかりと自分を持っている。そこもまた魅力的で、初対面の時から僕は彼女に強く惹かれていたように思う。
「加奈、付き合わない?ちゃんと大事にするから」
だから二度目で、僕は加奈に告白をした。
当時の僕はまだ27歳で、今から考えると青二才も甚だしく、未熟だったはず。それでも加奈は交際を申し込むと心底嬉しそうな笑顔を向けてくれて、僕たちはすぐに交際することになった。
ただ交際してすぐに、加奈から将来のことを聞かれ、僕は返答に困った。
「亮太、将来のこととか…考えてるよね?」
思わず言葉に詰まる。なぜなら、当時製薬会社でMRをしていた僕は信じられないくらいに忙しく、激務だったから。
それに加えて飲み会なども多くあり、心底疲れ果てていた。
― 結婚なんて、考えられないな…。
そう思った。
もちろん、加奈の存在の大きさは交際当初から気がついていた。彼女がいてくれるだけで安心できたし、心の支えになっている。それに、別れる気は更々ない。加奈のことは好きだし、大事にしたいと思っていた。
でも、結婚はその時は考えられなかった。
だからものすごく考えた結果、僕は本音を言うことにした。
「うーん…。加奈のことは好きだし大切だけど…。しばらく結婚はしないと思う。これは加奈がどうこうとかじゃなくて、僕が結婚に向いてなさそうだなと思っていて。だから“結婚は考えられない”、というのが正直なところかな」
一切、嘘はついていない。すべて真実だ。
だからだろうか。加奈はこれ以降、“結婚”について言及してこなかった。
ただ僕にとって、これがとても良かった。
正直、加奈と交際した当初は自分のことでいっぱいいっぱいで、他人のことを考えられる余裕なんてどこにもなかったからだ。
日々のタスクをこなすことに追われており、僕は周りが見えていなかったかもしれない。
それでも、何も言わずについてきてくれた加奈。
この、“余分なプレッシャーをかけずに待っている”状態だと、逆に申し訳ない気持ちにもなってくる。
― ちゃんと考えないといけないよな…。
そう思っていた。しかし実際は日々忙殺されて、それどころではなかった僕。
ただ、しばらくして転機が訪れることになる。
実は加奈と交際して1年が経った頃から、転職を考え始めた。今の会社にはお世話になったけれど、もっとステップアップしたい。それに新たな世界も、見てみたい。しかし今の給料を捨ててチャレンジする勇気もない…。
などとウジウジ悩んでいる時に、冗談で加奈に聞いてみたことがある。
「そろそろ転職したいんだよね…。今の会社は成長させてくれたけど、次のステップに行きたいなと思っていて。ただ、今より給料が下がるかもしれないし、上がるかもしれないし…まだ未知数だけど。もし僕が、無職になっても加奈は大丈夫?」
すると、加奈はあっけらかんと言い放った。
「もちろん。いざとなったら、私が養ってあげるよ」
「まじか。心強いな〜」
この一言で、どれほど救われただろうか。
結局この後、僕は転職することになった。
結果として前職よりさらに良い条件の会社が見つかり、昨年末に転職した。
それと同時に金銭面はもちろんのこと、時間にも余裕ができた。以前の会社は激務だったが、今の会社はそこまでではない。
だから加奈との時間が増えただけでなく、自分に向き合う時間も増えた。
だからこのタイミングで、三宿から池尻大橋へ引っ越そうと思い、色々と物件を探し始めた時のこと。
僕は、物件を見ながらふと思った。
― 加奈と結婚しようかな。
結婚は一人でできるものではない。もちろん相手の承諾も必要だ。でも本当に、とても自然に、「結婚しよう」と思った。
「加奈の家の契約って、いつ更新だっけ?」
「え?」
「今年の6月までだよ!」
「そっか」
― じゃあ…その前にプロポーズしよう。
そう思った。タイミングが良かったこともある。でもそれ以上に、僕が結婚をさらに決意したことがある。
それは、先輩に連れていってもらってすっかり気に入ってしまった、紹介制の『TWO LEAVES』に加奈を連れて行った時のことだ。
昨年末にできたこの店は、池尻大橋や三宿界隈に住むおしゃれな人たちのホットスポットになっている。
一度先輩に連れていってもらって以来、僕もよく通っている。たまたま池尻大橋で食事をしたので、食後にそのまま、加奈も連れて行くことにした。
なぜならわかりにくいエントランスに、紹介制という安心感。個室の方にはアートが飾られており、圧倒的におしゃれな空間…と、加奈が好きそうだなと思ったからだ。
「亮太、こんな素敵なお店によく来るの?」
「この前、先輩に紹介してもらったんだ。いいでしょ、ここ」
「うん。すごく素敵」
案の定、とても喜んでくれた加奈。
しかしこの日、僕が「やっぱり彼女は最高だ」と思ったことがある。
隣にたまたま、別の常連さんが座っていたのだが、僕は何度か会ったことがあるし、店で会うとたまに話す仲だった。
するとその方が、加奈に話しかけてきてくれた。
「亮太の彼女さん?」
「はい、そうです。初めまして、加奈と申します」
「加奈ちゃん!亮太から話は聞いてるよ」
「え〜そうなんですか?嬉しい。良い話だといいのですが(笑)」
「もちろんだよ!」
この二人の会話を聞いて、僕は思わずハイボールをクイっと飲み切ってしまった。
何げないことなのだけれど、加奈が、僕の友人や知人とも仲良くしてくれること。初対面の人でも、きちんと挨拶をしてくれて、臆することなく会話ができること。
簡単そうに聞こえるけれど、実はこれができる女性は意外に少ない。
「どこへ出しても恥ずかしくない」、なんて言うと上から目線で失礼だが、この先どんな場面でも、加奈と一緒にいると安心できると思う。
良い感じに酔いも回った帰り道。
「もう2年だね」
そう言う加奈の手を、僕は思わず握りしめた。
「そうだね。あっという間だな」
「本当に、私たちってケンカとかしないよね。2年の間に、ケンカしたことあった?」
「いや、ないな…。あとさ、加奈って束縛とかもしないよね。『いつ、誰とどこで飲んでたの?』とか言わないじゃん?」
加奈は圧倒的に、人として信用ができる。
だから僕も彼女を裏切らないようにしているし、この先も悲しませたくないと思っている。
「言っても意味がないというか…別に、亮太のこと信じてるし」
「そっか。ありがとう」
「こちらこそ。それより、寒いから早く帰ろう」
大前提として、加奈を尊敬している。
ただ結婚の決定的な決め手となったのは、タイミングと、自分に余裕ができたことが何よりも大きい。
そして加奈のちょっとした言動が、さらに結婚を早めさせるキッカケになった。
本当は3月くらいにプロポーズをしようかと思ったけれど、別に待つ必要はない。だから僕は、予定を早めて、2月中にプロポーズをした。
▶【Q】はこちら:「結婚は考えられない」と言っていた彼氏から、プロポーズをされた女。勝因は?
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