「高齢者向けシェアハウス」の特徴
「高齢者向けシェアハウス」とは一般的に、複数人の単身世帯の高齢者が共同生活を送る住まいです。プライベートな個室と食堂やリビングなどの共用スペースが用意されています。一般的な介護施設や有料老人ホームとは異なり、主な入居対象は自立している高齢者です。
介護サービスは原則として提供されず、あっても見守り程度にとどまります。そのため、生活の自由度が高く、入居の心理的ハードルが低い点が大きな特徴です。「まだ施設に入るほどではないけれど、ひとり暮らしは少し不安」という層に選ばれています。
他の高齢者施設との違いは、下記のとおりです。
■介護付き有料老人ホーム
常時介護スタッフが常駐し、手厚い介護が受けられ看取りも可能。その反面、費用は高め。
■サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
日中はスタッフが常駐し、生活の自由度はあるものの、介護サービスを利用すると費用が増えやすい面も。さらに、介護度が重度化すると退所せざるを得ないケースがある。
こうした施設と比べると、高齢者向けシェアハウスは「住居」としての性格がより強く、自立した生活を続けたい人向けの選択肢といえるでしょう。
また、主な入居時費用は下記のとおりです。
■敷金や保証金……0〜30万円程度
■月額費用
・家賃……4〜8万円
・共益費・管理費……1〜3万円
・食費(任意)……3〜5万円
合計……8〜16万円程度
今回のケースでいえば、ヤスオさんは月17万円ほどの年金収入があるため、高齢者向けシェアハウスを利用しても家計的に無理のない範囲といえます。
メリット・デメリット
高齢者向けシェアハウスのメリットは、「施設に入る」という抵抗感が少ない点です。一般的な住宅に近い雰囲気で、同世代との交流も自然に生まれやすく、孤独感の軽減につながります。また、費用も比較的抑えられ、外出や生活リズムを自分で決められる自由さもポイントです。
一方、共用スペースなどで住人と顔を合わせることから、共同生活が合わない人には向きません。また、介護が必要になった場合は別の施設への住み替えが必要になるケースが多いことや、専門スタッフが常駐しているわけではないため、医療・介護面のリスクはデメリットでしょう。
本人も家族も納得できる“終の棲家”の選び方
高齢期の住まい選びで大切なのは、「介護が必要かどうか」だけで判断しないことです。本人がどう生きたいのか、どんな暮らしに安心感を持てるのか……こうした価値観を尊重することが、決断後の後悔を防ぎます。
したがって、“終の棲家”を検討する際には、本人の現在の健康状態だけでなく、将来介護が必要になった場合の住み替え先や年金収入と支出のバランス、入居後にどれだけ貯蓄が残るかといった家計面の整理も重要です。
特に注意したいのは、「入居時費用+月額費用」を年金だけで賄えるかどうかです。もし不足が見込まれる場合は、貯蓄をどの程度取り崩すのか、いまの住まいをどう扱うのかといった点も含めて検討する必要があります。
また、「介護施設か自宅か」という2択にとらわれず、今回紹介したようなさまざまな住まいの形を知っておくことで、より納得のいく選択ができるでしょう。
ただし、高齢者向けシェアハウスは、元気なうちだからこそ検討できる住まいの選択肢です。ヤスオさんが「まだ元気」と言っているいまこそ、落ち着いて将来の暮らしについて話し合える貴重なタイミングでもあります。
住み替えの可能性や他の選択肢も含め、家族で早めに話し合い、納得できる暮らし方を考えていきましょう。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役
