
野原や空き地、道端でけなげに育つ野草たち。普段それらの名前を意識することはあまりないかもしれませんが、「雑草という草はない」という植物学者・牧野富太郎の言葉がよく知られているように、どんな草花にもそれぞれ名前があります。そして、野草の花も、よく見ると意外とかわいらしいものですよ。今回は、雑草として扱われる身近な花をクローズアップでご紹介。どこかで目にしたこの植物、名前は分かりますか?
日当たりのよい野原や道端で育つ花
整った形の白花が愛らしいこちらの野草。北海道~沖縄まで日本全土の畑や道端、野原などで見ることができます。花の大きさは6~7mmと、1cmにも満たない小さな花です。放射状に花弁がパッと開いたように見える花は、よく見ると、深く切れ込んだハートのように先が分かれた5枚の花弁で構成されていることに気づきます。ちょっとウサギの耳のようでもありますね。
花だけでなく、もう少し離れて株全体の様子を見てみましょう。

段々見知った姿に近づいてきたかもしれません。草丈は10~20cmと低く、よく枝分かれして広がります。葉は向かい合ってつく対生。柔らかい茎は紫色を帯びたものや緑色のものがあります。よく観察すると、茎には片側だけ産毛が生えています。

さて、この野草はなんでしょう?
正解は…
↓
↓
↓
↓
ハコベ

ハコベの基本データ
学名:Stellaria
科名:ナデシコ科
属名:ハコベ属
原産地:ユーラシア大陸
和名:ハコベ(繁縷、蘩蔞)
別名:ハコベラ、ヒヨコグサ、アサシラゲなど
英名:chickweed、chickenwortなど
形態:越年草
草丈:10~20cm
ハコベはユーラシア大陸原産で、世界中に広く分布しています。ハコベ属には多くの種類があり、日本にもおよそ18種類がありますが、日本でハコベと呼ばれている植物には主に、コハコベ(Stellaria media)とミドリハコベ(Stellaria neglecta Weihe)。より大型のウシハコベ(Stellaria aquatica)を含めることもあります。単にハコベというときはコハコベを指すことが多いです。

ハコベは雑草として扱われますが、根も葉も柔らかく、すぐに土から引き抜けるのであまり邪魔になりません。また、古くから食べられる野草として知られ、1月7日にいただく七草がゆに入れる春の七草の1つにも数えられています。春の若い茎葉を茹でてお浸しやみそ汁の具など食用にするほか、生薬としても利用されてきた身近な野草です。英名の「chickweed」「chickenwort」や別名のヒヨコグサは、小鳥やニワトリが好んで食べることに由来します。ハコベの属名Stellariaは、星を意味するラテン語の「stella」に由来し、可憐な花が星のように見えることから名づけられました。

ハコベは日本全土に分布し、日当たりのよい道端や野原などで見られる一般的な野草です。開花期は3~11月ととても長く、主に春~初夏にかけて咲き、特に春に多く咲いて目立ちますが、環境によっては晩秋まで白い小さな花を見ることができます。

ハコベの見分け方

コハコベ、ミドリハコベ、ウシハコベはそれぞれよく似ていますが、よく観察すると違いがあります。この中で一番見分けやすいのはウシハコベ。全体に大型で、茎は節の部分が暗紫色を帯びます。見分けるポイントは花の中心にある花柱が5本に分かれていること。コハコベ、ミドリハコベはともに3本なので、ここをチェックすると分かりやすいです。とはいえ、とても小さいので、肉眼ではなかなか見分けが難しいかもしれません。

コハコベとミドリハコベの主な違いは、茎の色。コハコベは茎が暗紫色を帯びるものが多く、ミドリハコベはほとんどが緑色です。また、コハコベは這うように広がりやすく、ミドリハコベは立ち上がりやすく、また葉が大きめという傾向もあります。しかしながら、個体差があるので、これに当てはまらないことも。明確な違いがあるのが種子の形で、コハコベの種子には低い突起があり、ミドリハコベの種子には尖った突起があるという特徴があります。ただし、種子はわずか1mmほどのサイズなので、観察するにはルーペやマクロレンズが必須ですね。同様に肉眼ではなかなか観察が難しいですが、コハコベは雄しべの数が1~7本と少なめで、ミドリハコベは5~10本と多めであるという違いもあります。


