◆なぜ東大から多様性が失われつつあるのか
一部進学塾や進学校出身者まみれになってしまったのは、学力試験が非常にハックしやすいためでした。東大の問題は良問ぞろいといわれますが、裏を返せば「真っ当にやれば解ける程度の問題」が揃っている。
私自身、奇を衒った問題や重箱の隅をつつくような知識問題がほぼ出ないと知っていたので、対策しやすかったことを覚えています。
学力試験は、学力という単一パラメータの長短を競うものであり、しかもこれは定式化されたトレーニングを一定期間積めば、誰でもある程度は伸ばすことができると来ている。
それに、負けても敗因は明らかなのですから、対策も立てやすい。透明性が担保された単一パラメータでは、どうしても攻略されやすくなってしまいます。
そこで東大が出した苦肉の策こそが、推薦入試なのではないでしょうか。すなわち、「パラメータを非公開にしてしまう」のです。
それに、私が調査した限りでは、おそらく複数個のパラメータを用意して、それぞれ独立の審査項目として設けているようなきらいがあります。
こうすれば、「何が評価され、何が評価されないか」がわかりにくく、ハックされにくくなる効果が望めます。
もちろん、東大側もこれによって透明性も公平性も失われてしまうことは承知の上でしょうが、それでもなお荒療治の必要があると考えたからこその推薦枠導入なのではないでしょうか。
◆東大から感じた本気の覚悟
昨今の大学受験はかなり窮まったところまできており、「どんな勉強をどのルートで辿っていけばいいか」がある程度定式化されてしまっています。もちろん、個別の生徒により進捗は異なりますが、それでも進むべき道筋とゴールは変わらない。
となれば、あとはどれだけ早くその道に乗り込み、進み始めるかを競うゲームになってしまっている。受験の早期化は、当然の帰結として現れました。
今回の東大の施策が、最善とはいいません。
明らかに恣意的な判断で合否を決めていますから、落とされたほうはたまったものではない。
合格しても、「推薦枠」と色眼鏡で見られる危険性もあり、勝っても負けても反応に困る試験になっている感は否めません。
ただ、それでも妥協せず当初の目的を達成しようとし続けるその姿勢からは、「このままではいけない」と本気で感じたが故の覚悟を感じます。
最近は不祥事続きの東大ですが、未来には一定期待できるのではないでしょうか。
<文/布施川天馬>
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)

