「美しい」を見つめ直すためのヒントを探った、&Premium143号(2025年11月号)「美しい、ということ」より、動物ジャーナリスト・森 啓子さんの暮らしに寄り添う"美しいもの"を特別に紹介します。


森 啓子さんにとって「美しいもの」とは。

美には没頭してしまうし、崇拝もしたい。そして、心が和むというのもマストです。なので、今回のテーマは〝麗はしの和らぎ〞。私が撮影しているマウンテンゴリラの鼻紋も含めて〝美しいもの〞とは、アニミズムでいうカミのような存在ともいえます。40年くらい前に求めた紗袷の着物はその最たるもの。テレビ業界でショッピング番組を作っているときに出合い、なんてきれいなのだろう、と感動しました。絵柄が描かれた絽という生地の上に無地の紗を合わせて、絵を浮かび上がらせます。2枚の透ける生地が重なっているので、身に纏うと水紋のようにゆらめくんです。一年のうち2週間しか着られない儚さもあります。涼しさを視覚でも表現しようとする日本の繊細な美を感じます。悲しいことがあるとこれを撫でて、気持ちを癒やしています。江戸切子のお猪口は友人からのプレゼント。和食にも洋食にも合うので、ほぼ毎日、これで冷酒をいただいています。
森 啓子動物ジャーナリスト
テレビ業界を経て、2011年から本格的に動物ジャーナリストとしてマウンテンゴリラの撮影を始める。NPO法人「ゴリラのはなうた」主宰。
photo : Satoshi Yamaguchi edit & text : Wakako Miyake
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BEAUTIFUL THINGS / 美しい、ということ。&Premium No. 143
洗練された大人が選ぶのは、心がときめく「美しいもの」や「美しいこと」、そして自分らしい美しい生き方ではないでしょうか。いまの時代、効率や成果が大切にされる一方で、夕陽の輝きに見とれたり、花のひらく姿に心を澄ませるといった感覚が、少しだけ後回しにされているようにも感じます。けれど「美しい」と感じる心こそが、私たちの日々を本当に豊かにしてくれるのだとは思います。この一冊では、住まい、装いや日用品などのもの選び、ふるまいや言葉、そして生き方にいたるまで、Better Life の礎となる「美しい」を見つめ直すためのヒントを探ってみたいと思います。
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