インドは投資対象になり得るのか
とにもかくにも、現在のインドは著しい経済成長を続け、インドルピーは日本円よりもはるかに高金利水準(名目金利)であるので、インドで事業展開する傍らであれば、インドに進出し資産のポートフォリオとしてインドルピー建て資産を保有することに魅力を感じる読者個人もいらっしゃるかもしれません。
浮いている1,000万ルピーを定期預金にしているだけで毎年60万ルピー以上が上乗せされるのはなかなかです。当然ながらインフレ率と為替リスクを考えれば単純に高い預金金利を狙って飛びつくわけにはいきませんが。
ちなみに、個人の日本人がインドで定期預金するためには、観光ビザなどでは銀行口座を開設できませんので、インドで就労し普通口座を開く資格を得るか(事後的にインドを離れるとき、NRE/NRO口座〈Non-Resident External Account またはNon-Resident Ordinary Account〉に口座種別変更し所得を得ることも可能)、または事業主体として直接的にインドに投資した上で法人として口座開設資格を得る必要はあるでしょう。
続いて、直接投資などによってインド内に事業資産を保有した場合の価値変動はどうでしょう。製造業にとっては土地と生産設備の取得は必須ですし、サービス業であってもオフィスの確保が重要になってきます。
資産価値は常にインフレの影響を見なければならないわけですが、株式やコモディティ(原油や金など)、そして不動産はインフレに強い資産の筆頭です。
その意味では、インド内事業展開のために直接投資によって不動産取得することは(個人の場合は諸々の「土地所有に関する外国人規制」があります)、インドの経済成長を享受する事業を営むための資源としても、インフレの資産への負の影響を緩和ないしは資産売却益を得るための資源としても十分に検討可能な投資計画となり得ます。
為替リスクを考慮した上でインドルピーの保有、そして規制・税制・流動性リスクを考慮した上でインド内での土地取得をするというのは、堅実な経済資源増加のための選択肢でしょう。
インドの不動産開発に注力する日本企業
事業そのものが不動産開発ですので特殊な例ではありますが、日本の複数の不動産開発事業者はインドに大規模投資をしていまして、インド経済成長の恩恵を全面的に受けるであろう好例です。
2023年10月17日の日本経済新聞によれば、三菱地所が2023年からチェンナイでシンガポール大手と2棟開発に計340億円を投資(貸付面積24万平方メートル)してビジネスパーク開発プロジェクトに参画、そして三井不動産は2020年にバンガロールでオフィスビル4棟(貸付面積33万平方メートル)の開発を発表しています。三菱地所はその後2024年にデリー首都圏グルガオンにて物流施設投資も発表しました。
何よりも当時の日経新聞の発表で個人的に驚いたニュースは、住友不動産のムンバイ複合再開発です。延床面積126万平方メートル、先行していた2件と合わせて総投資額7,000億円規模というもの。
そもそも、あの商業の大都市ムンバイで、これだけ広い敷地を確保できたことだけでも凄まじいインド市場開拓能力でありますが、住友不動産と言えば、中国の不動産バブルが弾ける直前(2020年6月)まで中国・大連での不動産開発事業を展開していたのでありまして、その売却撤退タイミングが完璧だったと言わざるを得ません。
同社は2013年から2020年の期間、大連で事業展開していたことになり、中国不動産事業の好調期をつかんでいたわけです。中国事業からの先を見越した撤退と、インド事業への大胆な投資は、卓越した経営戦略が発揮された結果でしょう。
今後もインドの成長を取り込んで、日本の不動産開発事業者各社の競争力の向上が期待されます。
中川 コージ
IIMインド管理大学ラクナウノイダ 日印研究・産業開発センター
シニアリサーチアソシエイト(上席研究員)
