

すでにかなり高値になっているバンコクのタワマンはいまだ投資に向くのだろうか。
◆高騰時に立ち上がったプロジェクトが続々完成中

しかし、ウイルス蔓延阻止の鎖国が2022年6月ごろに終了したときには、もう以前のタイではなくなっていた。中国人渡航者が激減したのだ。あるジャーナリストによれば「そもそもタイ観光は中国政府が推進していたためで、パンデミック以降その推しをやめたからタイへの中国人渡航が減った」という。
タワマンは今日建てようと計画して明日完成とはいかない。19年以前に計画されて建設がはじまり、中国人が来なくなった23~25年の今になって続々と完成している状況にある。とにかく豪華で高級で、日本のように「低層マンションもいいよね」というトレンドもほぼなく、何十階建てという文字どおり「タワマン」が造られていく。
価格帯もおそろしく高額だ。郊外に行けば1室60平米前後で1000万円以下もあるにはある。都心の高級物件はタイ・バーツ建てで億超え、日本円換算では円安の今5億円も驚く設定ではない。2028年竣工予定のポルシェデザインのタワマンは発表当時で72億円超。日本人居住者も多いトンローというエリアにできたラグジュアリー・マンションのペントハウスは700平米を誇るにしても30億円を超える。
タイは今、隣国カンボジアとの国境紛争が起こっており(執筆時は一応停戦中ではあるが)、同時に諸事情が重なり経済的に見通しのよくない状況が続く。それなのに豪華タワマンが需要を超えて供給されている。タイのメディア報道では2024年末時点でバンコクの未販売住宅在庫は約23.5万戸という。
間の悪いことに、25年3月下旬に隣国ミャンマーで発生した地震がバンコクでも観測された。中国ゼネコンの建設中ビルが倒壊したり、日本とは違って耐震設計ではないことから多くのビルの壁にひびが入った。これによってバンコク不動産のバブル崩壊が懸念されたものの、あまり値下がっていない。
というのは、タイ・デベロッパーは強気姿勢で、「うちはこの値段で売る」と決めた価格を死守する傾向にあるためだ。タイ・メディアのレポートでは一部プロジェクトで提示価格から5~10%の値引きがあるということだが、強気には変わりがない。
また、筆者知人は都内に保有する1室の売却を考えていたが、ちょうど先の地震が起こってしまう。ところが知人の住む都心地域全体の相場は下がるどころか数十%も上昇した。相場が下がると見込んだ需要が拡大してか、逆に値上がりしているという。実際、新築相場も高騰時に計画されていることもあって、21~25年の過去5年間で10〜17%程度は不動産価格が上がっている状況だ。
結局のところ、バンコクのタワマンは現時点で買いなのかどうか。
◆不動産のプロに訊いたバンコク不動産投資でやっていいこと・悪いこと
バンコクやタイ東部のリゾート地パタヤなどで不動産売買に長く携わっている西尾靖氏に話を伺った。西尾氏は日本でサラリーマン大家になり脱サラ。2009年にASEANの不動産視察で魅力を感じ、そのまま海外不動産エージェントになった。海外不動産販売実績は実に1000ユニット以上となる。
「タイの不動産投資は、基本的に海外とか日本とか関係なく、『安く買って、高く売る』なんですよ。これがまず第一条件」
西尾氏は「不動産投資はとにかく安く買って、運用を考え、最後にどう売るかです」という。バンコク不動産投資も賃貸に出して利益を得る「インカムゲイン」と、不動産を売却して差額で利益を得る「キャピタルゲイン」が中心になる。安く買って、家賃収入でキャッシュインしていれば、原価が下がっていくことと同じ。
西尾氏は「まず安く買い、ランニングしている間に『出口』をどうするか決めればいい。この出口を考えて買っていない人が意外と多くて」という。スタート時点で失敗をする外国人投資家は少なくないようだ。
外国人がタイの不動産を購入する場合、土地そのものは購入できないので分譲タワマンを買うことになる。それも日本などからの外貨送金でキャッシュ一括が原則だ。ローンが組めないので、安い物件だとしてもそれなりの額を一気に支払うというリスクが伴う。
「不動産は『個』と『環境』です。個は建物のクオリティであったり、部屋の内装、管理状態。それがすごく重要です」

「不動産は買ったら活用方法は3つしかない。『売る』『貸す』『住む』しかない。もし絶対負けない不動産投資というなら、自分が住めばいいのです。自分が住みたいと思う物件を買うのがベストだと思います」
西尾氏曰く「自分が住みたいものは最悪自分が住めばいい。自分が住みたい物件はきっと借りたい人、買いたい人もいます」。それが西尾氏の持論である。

