◆本当にあった日本人の不動産詐欺被害

たとえばインカムゲインがどれくらいになるのか。タイ・メディアの記事ではバンコクでの賃貸収益は平均利回り4~6%といったところ。西尾氏も「ざっくり、バンコクの利回りは5%が全般的になっていると思う」という。
「デベロッパーがプレビルドの段階(着工まえから分譲販売すること)で利回り6%を3年間保証と宣伝することもあります。こういうのは、利回りつけないと売れない物件だ、ということを認識したほうがいいです」
と西尾氏。実際にそれで成功する投資もあるが、結局は甘い話には気をつけろということ。
「パンデミック以前から日本でバンコクの物件販売会をしていることもあります。日本の銀座とかでね。先ほどのビーチフロントじゃないですが、いい物件はそこまでしなくても客が来ますよ。例外はありますが、わざわざ海外で販売会をしている物件もまた、そこまでコストをかけないと売れない物件ということを認識したほうがいいです」
ともいう。先述のようにタイの不動産購入は外国人の場合、基本的に一括キャッシュなのでリスクがある。「株などのようにドル・コスト平均法で買っていくわけにはいかない。プレビルドなら完成まで積み立て的に払うこともできますが、完成したときにディベロッパーがいった利回りが出るか。実際、フタを開けたらそうじゃないことが、まあ私の経験上ほとんどで。だから、安く買うことをとにかく勧めるのです」
そんなタイ不動産売買の経験豊かな西尾氏だが、過去に失敗したこともある。
「タイで最大に失敗した例は、2012年に販売をはじめたアユタヤの問題があった物件売買ですね」
アユタヤで起こった、日本のTVニュースにもなったような事件で、簡単にいえば日本人向けに販売した物件が登記されずにいたという詐欺まがい事件だ。この事件を書いている日本人のブログを参照にすると、1ユニット195万~245万バーツ(当時600万~750万円くらい)で販売されたようだ。完成したものの購入した人の名義で部屋は登記されず、管理会社はのらりくらりと説明をするだけだったという。
「問題になったのが2017年だったはず。それを私は売ってしまったんです。40件くらい。縁というものは不思議なもので、そのプロジェクトの最後の代表者が私です。このプロジェクトに関わった人の中で、私みたいにタイの不動産や法律に知見があり、関係各所への人脈も持っていて、解決できる可能性がありそうな人がおそらくいなかったので、腹をくくって引き受けました。私がバトンを引き受けた時点での投資家は369人いましたが、その方たちの多くを出口までうまく案内をしたというところで終わったんですけどね。最悪の失敗でした」
プロでも騙されるような詐欺まがい案件はタイではたくさんある。筆者の知人(タイ人)はゲストハウスをはじめるためにパタヤで物件を購入することにした。銀行でのローン審査もおわり頭金を振りこんだが、担当者がそのままその金を持って逃げた。銀行に返してもらうように頼んだが、銀行側は「担当者個人とそちらの問題で、当行は無関係」とされてしまった。
◆裏技で購入することもできるけれど…「タイ人女性の名義で買って根こそぎ奪われる」
執筆時点では円安だけでなくタイ・バーツも高騰していて、2025年11月ごろは1万円が2100バーツほどだったところ、26年2月にはついに2000バーツを割りこんだ。少額の両替ならインパクトは些細だが、1000万バーツの物件を購入となると、その差は240万円近くにもなる。
日本ではパンデミック前後くらいに“億り人”と呼ばれる人が急増した。その中には仮想通貨の特性を活かし、海外で不動産投資を考えている人も少なくないようだ。国によっては実際に仮想通貨でスーパーカーや不動産を購入できるというが、さすがにタイではダイレクトに仮想通貨を使った不動産売買は聞いたことがない。
他方で、世界中に闇業者が存在しているという噂をあるジャーナリストから聞いた。海外在住のやはり仮想通貨投資をしている筆者知人も似た話を飲み屋でしていた。タイでも仮想通貨などの売買が流行していて、筆者の周囲にもタイ人や欧米人で短期売買を糧にしている人が少なくない。普通はタイ政府の認可を受けた取引所で売買するが、バンコクにもそういった地下的な業者がおり、仮想通貨を秘密裏に現金化してくれるのだという。日本にある仮想通貨口座から送金となれば、少なくとも日本の法令に引っかかる可能性が高いので別の国を経由したりするらしいが、いずれにしてもリスキーでしかない。
タイ分譲マンションは外国人名義で購入できることは先述のとおりだが、1物件の全戸数の49%までしか外国人に販売できないという規制がある。そのため、先のように未販売のあまった戸数が多数あっても、全数を外国人が購入できるわけではない。そもそもタイの富裕層には強固なネットワークがあり、プレビルドの段階で本当にいい物件は先にタイ人富裕層間で売買がおわっており、優れた物件を一番安いタイミングで外国人が購入するのは難しい。
しかし抜け道もあって、法人設立をすることでタイ法人≒タイ人とみなされ、我々外国人でもいい物件を押さえるという技もあるにはある。その後、法人税などいろいろ諸経費がかかってくるので、そのあたりと損益をしっかり計算しないと割に合わないかもしれないが。
悪手としてやってはいけないのは、タイ人名義で購入することだ。タイ人配偶者であればまだ話は異なるが、よくあるのが男性が懇意にするタイ人女性の名義で買うこと。これで根こそぎ奪われることは昔からよくある話である。
タイ人は日本人が思っている以上にクレバーな人が多い。特に女性は魅力的な人も多く、同じ言語を有するタイ人男性でさえ騙されることが頻繁。タイ人名義のほうが簡単に買えるとはいえ、必ず自分の名義で買うようにしたい。

