この話を語ってくれたのは篠原弘毅さん(仮名・33歳)。思い返してもひどく不思議で、怖くも思う体験だったという。

◆一見、何の変哲もない「1LDK」での暮らし
「今から10年ほど前、建築物の施工管理の仕事をしていた頃の話です。当時はだいたい1〜2年ぐらいの工期に合わせて、日本全国を飛び回るような生活をしていました」その不思議な体験をしたというのは、篠原さんが2年目の頃に、地方の現場に応援要員として転勤を命じられた時のことだった。
「その時に住んでいたのは、会社が何部屋か借り上げていたアパートに追加で借りた部屋でした。1LDKの部屋で、ひとりで住むには十分過ぎるぐらいの広さでしたね。外観に特段変わったところはなく、雰囲気が悪いこともなかったんです。なので、あんな経験をすることになるとは思ってもいませんでした」
◆ただ部屋の中で「座り続ける」日々
まだ駆け出しの頃だったこともあり、現場に慣れるまでは緊張もあった。配属間際の頃は、土日は家でゆっくり過ごすことが多かった。そんな生活が数カ月、半年と続き、結局その現場に携わっていた10カ月間、丸々続くこととなった。「後で振り返ると、それがどう考えても変なんです。自分は地元が好きで、地方の現場でも月に最低1回は地元に帰るのですが、なぜかその現場ではそうした気が起きなかった。地元から遠いならまだしも、新幹線で1時間半ぐらいと、自分にとっては全く苦にならない距離でした」
転勤先で何かやることがあったのかといえば、そんなこともなかった。同僚と会うわけでも、恋人ができたわけでも、趣味に時間を使っていたわけでもなかった。
「じゃあ何をしていたのかという話ですが、それがうまく説明できないんです。仕事が終わった後や休みの日は、ひたすらに家にいるだけ。部屋でテレビを見たりスマホをいじるわけでもなく、部屋の中でただ座っていた記憶しかないんです」

