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新オーナー、サスキア・ド・ロスチャイルド氏が描く「ドメーヌ・ウィリアム・フェーヴル」の新時代

新オーナー、サスキア・ド・ロスチャイルド氏が描く「ドメーヌ・ウィリアム・フェーヴル」の新時代

新ラベルデザイン:伝統とテロワールの視覚化

2023年ヴィンテージから、ドメーヌ・ド・ウイリアム・フェーヴルは新しいラベルデザインを採用した。サスキア・ド・ロスチャイルド氏は新ラベルについて「ウィリアム・フェーヴルの偉大な歴史とアイデンティティに敬意を払いながら、その個性をより明確に表現したいと考えた」と語った。

新しいラベルは、伝統的な紋章とドメーヌを象徴する緑色を継承しつつ、より洗練された現代的なデザインへと生まれ変わった。これは「進化であって革命ではない」という考えのもと、長年のファンにも安心感を与える洗練されたマイナーチェンジとなっている。

画像: 左からプティ・シャブリ、シャブリ、プルミエ・クリュ、グラン・クリュの新ラベル。プルミエ・クリュとグラン・クリュのラベルは中心に畑の場所を示す簡略なイラストが描かれている(右写真)。白地はネゴシアンボトル、緑色はドメーヌボトル

左からプティ・シャブリ、シャブリ、プルミエ・クリュ、グラン・クリュの新ラベル。プルミエ・クリュとグラン・クリュのラベルは中心に畑の場所を示す簡略なイラストが描かれている(右写真)。白地はネゴシアンボトル、緑色はドメーヌボトル

最も注目すべき点は、プルミエ・クリュとグラン・クリュのラベルに、それぞれのテロワールの地形や特徴を描いたイラストが添えられている点だ。これにより、消費者はワインを手に取った瞬間から、その土地の物語を感じることができる。「何よりもまず我々はヴィニュロン(ブドウ栽培醸造家)である」という思想が、視覚的に表現されている。

また、ドメーヌものとネゴシアンものの区別も継続される。自社畑のブドウのみで造られるドメーヌものは緑色の背景、契約農家から買い付けたブドウで造られるネゴシアンものは白色の背景という伝統的な色分けが、新デザインでも踏襲されている。

新醸造所の建設と未来への投資

今回の訪問で明らかになった最も重要なプロジェクトが、新醸造所の建設計画だ。これは単なる施設の拡張ではなく、ワインの品質をさらに高め、ドメーヌの哲学を具現化するための重要なステップである。

計画の核心:完全なグラヴィティ・フロー

現在の施設は、シャブリ村内に点在する歴史的な建物を活用しており魅力的である一方、ロジスティクスや作業効率の面で限界に達していた。特に、ブドウや果汁の移動にポンプを多用せざるを得ない状況は、「ワインへの負担を最小限に抑える」という理想とは必ずしも一致していなかった。
新醸造所は、シャブリ村の出口、オーセールやポンティニー方面へ向かう道沿いに建設される。丘の斜面を利用した半地下2階建て構造により、ブドウの受け入れからプレス、醸造タンクへの移動まで、すべての工程をポンプを使わず重力のみで行うことが可能となる。上階でブドウの受け入れと選果を行い、重力によってブドウがプレス機へと送られ、プレスされた果汁はさらに下の階にある醸造タンクへと自然に流れ落ちる設計だ。

画像: 計画の核心:完全なグラヴィティ・フロー

サスキア・ド・ロスチャイルド氏は、特に、この新施設がカーボンニュートラルを目指すものである点を強調した。醸造所の温度管理には地熱エネルギーを全面的に活用し、屋根にはソーラーパネルを設置して必要な電力の大部分を自給自足する。雨水を回収・ろ過して洗浄水として再利用するシステムも導入され、建築資材には地元の木材や石といった環境負荷の少ないサステイナブルな資材が積極的に使用される。

建築許可は既に取得済みで、2028年の収穫からの稼働を目指している。この計画は、ドメーヌが次の100年を見据えた、品質と環境への揺るぎないコミットメントの証といえる。

画像: ウィリアム・フェーヴルのヴァルミュールの畑の一画に新たに作られた休憩地で、新しい醸造所の建設計画が発表された

ウィリアム・フェーヴルのヴァルミュールの畑の一画に新たに作られた休憩地で、新しい醸造所の建設計画が発表された

醸造哲学の継承

ウィリアム・フェーヴルの品質を支えるのは、醸造責任者、パスカル・レイノー氏と栽培責任者、フランソワ・メナン氏を中心としたチームの揺るぎない哲学だ。ブドウはすべて手摘みで、13kgの小箱で丁寧に運ばれ、選果台で厳しく選別される。醸造は極めてシンプルで、新樽は一切使わず、平均樹齢6年以上の古樽とステンレスタンクのみで発酵・熟成を行うことで、各テロワールの純粋な個性を引き出すことに徹している。

ディレクターのディディエ・セギエ氏は1998年にシャンパーニュ・アンリオがドメーヌ・ウイリアム・フェヴルを買収した際に醸造責任者に任命され、ドメーヌ・ウィリアム・フェーヴルをシャブリのトップブランドに押し上げた輝かしい実績を持つ。彼の率いる経験豊かなチームと、ボルドー・ポイヤックのシャトー・ラフィット・ロスチャイルドを含むドメーヌ・バロン・ド・ロスチャイルド(ラフィット)を2018年に引き継いだ、サスキア・ド・ロスチャイルド氏の明確なビジョンが融合し、ドメーヌはシャブリの真髄を追求し続けることになる。サスキア氏は「私たちはこのドメーヌの管理人に過ぎない。この偉大なテロワールを健全な形で次世代に引き継ぐことが私たちの使命だ」と、その想いを静かに語った。

画像: ヴァルミュールの畑の一画に作られたテラス。ドメーヌ・ウイリアム・フェーヴルは、1950年代後半からウィリアム・フェーヴル氏本人が先見の明を持ってを買い集めた最高の区画の畑を引き継いでいる

ヴァルミュールの畑の一画に作られたテラス。ドメーヌ・ウイリアム・フェーヴルは、1950年代後半からウィリアム・フェーヴル氏本人が先見の明を持ってを買い集めた最高の区画の畑を引き継いでいる

初のオーガニック認証を受けた2023年ヴィンテージは新たな門出を祝うにふさわしい、生命力に満ち溢れた素晴らしいワインに仕上がっている。また、テロワールの個性を映し出す新しいラベル、そして最新の環境技術を導入した新醸造所の建設など、伝統を守りながらも、時代の変化にしなやかに対応し進化を続けるドメーヌ・ウィリアム・フェーヴルは今、新たな黄金時代の幕開けを迎えたといってよいだろう。

配信元: ワイン王国

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『ワイン王国』(隔月刊)は、生産者や日本を代表するソムリエの協力の下、世界のワイン情報をはじめ、現地取材による世界各国の生産地のワイン&グルメスポットや観光スポット、また食とのマリアージュ企画など、美味しくて役に立つ情報を満載しています。“おうち飲み”にうれしい1000円台&2000円台のワインを紹介する「ブラインド・テイスティング」企画は創刊号から続いている人気コーナーです。

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