
地主の敷地に届いた、銀行員からの「立派なマンションを建てませんか」という融資提案。一見、親身な助言に思えますが、不動産のプロは「実行しなくて正解です」と回答。本記事では、松田博行氏の著書『不動産・相続・終活のホントのところ府中の不動産会社の社長が教える後悔しないアドバイス』(叢文社)から一部を抜粋・編集し、銀行員の提案が資産価値を大きく損なう理由や、地主の人生を最優先に考えあえて「駐車場」を選択した真相について解説します。
庭先にマンションを建てるか悩む地主Aさん
私の知り合いの地主Aさんの家に伺ってきました。大きな敷地の駐車場部分に鉄筋コンクリート造の立派なマンションを建築しようかと考えているようでした。どうやら、銀行が融資しますと言っているようでした。
その他、株式、預貯金などの話しを横断し、様々な問題がある事がわかりました。比較的緊急性が高い内容で、早めに対応してあげないと、とんでもないことに発展しかねないと感じました。銀行は融資ができれば、会社業績と担当者成績が評価されるので、極力コストのかかる建物を建築してもらったほうがメリットがあります。
一見、ナイスアドバイスをしているように見える銀行員ですが、私に言わせるとダメダメです。将来のことを見据えたアドバイスになっておらず、建築をしたら、不動産全体の資産性を大きく損なうような提案です。
なぜ、地主Aさんの人生を考えないような提案ができるのか不思議で仕方がありませんが、銀行員に知識がないのか、自分勝手なのか、まったく他人事のようなことばかりのアドバイスに聞こえてしまいます。
「家族信託」と「後見人制度」の利点・注意点
私の考え方とは一周半違うので、違和感ばかりです。一方向からしか見ることのない生活対策など全く意味はありません。
一方向からしか見ることのない生活アドバイスは、一見正解のように見えますが、反対側から見たら恐ろしい結果になるアドバイスです。実行しなくて正解です。
家族信託
不動産を所有している親(地主Aさん)は、今は意思表示などができていますが、いつ意思表示ができなくなってもおかしくないような状況です。となると、万が一の時のために不動産処分等ができる状態を作っておくと安心です。
その際に、自由度が高い方法が家族信託です。家族信託は、こんなイメージです。健一パパ(仮名)が所有している不動産を、太郎(息子・仮名)に名目上、所有権を移しておくものです。
所有権を太郎が持っているので、太郎の判断で不動産処分を自由にできるようになるので、健一パパが意思表示ができず法律行為ができなくなったり、さらにお金に困り始めた時に助けることができると同時に、お金のトラブルで家族が不幸になる事を防ぐことができます。
注意点は、名目上、太郎へ所有権が移転していたとしても、そこから上がる収益、費用、利用する権利等は健一パパに帰属し続けるという点です。
太郎は、健一パパのメリットのために信託契約した内容でしか不動産を処分することができないので、健一パパには所有権は名目上ないのですが、不動産の権利を実質的に持ち続けることができるという点に大きなメリットがあります。
後見人制度
後見人といった制度もあります。本人が意思表示ができなくなった場合にも、法律行為ができるよう『後見人という人を代理人にする』ための制度です。任意後見の場合、身内を指定することもできますが、法定後見の場合、裁判所が指定した司法書士や弁護士が後見人になります。
後見人は、健一パパの代理人のようなものです。後見人制度は使い勝手が悪く、一度、後見人制度を利用してしまうと、その後、毎月発生するランニングコストが健一パパが存命中の間、エンドレスになります。
また、後見人は、健一パパが損をする行為は行えません。この『健一パパが損をすることができない』というのが曲者で、健一パパのためになる事であっても解釈によりできないことがあります。
本当に使い勝手が悪いのです。一度、後見人制度を利用すると途中でやめることはできませんので、諸刃の剣的な側面も持ち合わせます。利用する際には、気を付けましょう。
