◆背後からの“妙な圧”

「吊り革をなんとか掴んで、電車の揺れに耐えていました」
そのとき、背後から“妙な圧”を感じたという。
「はじめは混雑のせいだと思いました。でも、押される感覚が明らかに意図的だったんです」
ぐいぐいと押される。踏ん張ると、さらに強く押される状況だった。
「後ろを振り向けませんでしたが、『これは普通じゃない』と直感しました」
そして次の瞬間、「オイィ!」という大声とともに、強く突き飛ばされたそうだ。
◆電車内での小さな攻防戦
山田さんは前の座席に倒れ込みそうになり、周囲がざわついた。
「一瞬で血が上りました。ここで黙っているのは違うと思ったんです」
山田さんは“あえて”声を張り上げたのだ。
「え? 怖っ! 何? 何ですか?」
周囲にも聞こえるように大きな声を出したという。山田さんを押していたのは、青いツナギ姿の男性。山田さんの言葉に男性は一瞬固まったが、「お前が悪いんだろ」と小さい声で返してきたようだ。
周囲の視線が集まるなか、山田さんはその場を動かなかった。
「あえて“危ない人やん”って言いました。相手が想定していない反応を返すことで、尻込みさせたかったんです」
その後も肘を乗せられるといった嫌がらせは続いたが、最寄り駅に到着すると、今度は山田さんが足を踏み返して電車を降りたそうだ。
電車を振り返ると、車内から睨む男性の姿が見えたという。
「正しい行動だったとは思っていません。でも、あの“密室”で一方的にやられるつもりはありませんでした」
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

