◆新入社員を問いただすとトンデモな回答が…
今回も、その“少しの違い”が積み重なり、安全装置が働いてラインが止まったとみられる。誰が交換したのかと確認すると、Aが渋々と手を挙げた。詳しく話を聞いた長田さんは、思わず言葉を失ったという。「Aは、『異音の原因はベアリングの劣化だと思いました。ただ純正の予備がなく、発注しようとしたら納期が未定だったんです』と言うんです。確かに、メーカー在庫が切れていて、すぐ手に入らない状況でした」
通常であれば、代替品を使うかどうかはメーカーや上長と相談する。だがAは別の方法を選んだ。
「型番を入力して、代わりに使えるか調べたそうです。“条件が近ければ代替可能”という回答が出た、と。誰に確認したのかと聞いたら、何の悪びれる様子もなく『ChatGPTです』と答えました」
「幸い、機械自体は大きな損傷には至りませんでした。ただ作業ロスの損失は数百万円規模。Aは厳重注意と始末書提出になりました。本人はかなり落ち込んでいましたね……」
長田さんは淡々と続ける。
「A本人は、本気で『効率的だと思った』と言っていました。上司に確認するよりも早い、と。確かにスピードだけを考えれば、その通りでしょう。私もプライベートでChatGPTを使うことはあります。ただ、AIにはハルシネーション(間違った情報にもかかわらず、もっともらしく答えること)も少なくありません。その辺りのリスクを管理者という仕事上、理解しておくことは当たり前なんですよね……」
AIは確かに便利だが、それを過信してはならない。今回の手痛い経験から、新入社員もきっと学んだことだろう。
<取材・文/結城>

