
◆隣席の同年代男性から話しかけられ…
全国に支社を持つ上場企業に勤める松島智明さん(仮名・36歳)は、この春まで香川県で単身赴任をしていた。高松から東京までは『サンライズ瀬戸』という寝台列車が出ているため、赴任中は何度も利用していたという。「高松駅を夜9時台に出発するため、残業がある日も間に合うので都合が良かったんです。それに東京から戻る時も日曜夜のサンライズにすれば、高松は月曜の朝到着で会社にも間に合う。これだと普通の週末でも家族と一緒に過ごせますし、かなり重宝していました」
ちなみに、いつも利用していたのは個室ではなく、簡易寝台の「ノビノビ座席」。すぐ満席になる個室と違って、繁忙期以外なら直前でも空いていることが多く、寝台料金もかからないので安く乗車できるからだ。
「両隣と完全に仕切られているわけではなく、プライベート感は薄いですね。でも、それほど気になりませんでしたし、いつも乗る前に買った寝付け用の缶ビールや缶チューハイを飲み、後は寝るだけでしたから」
だが、昨年のとある週末、いつものようにノビノビ座席で缶ビールを飲んでいると、隣席の同年代らしき男性が声をかけてきた。遅めの夏休みを取って四国を周遊していたらしく、その話をあれこれ語ってきた。
松島さんは基本的に職場と会社が用意したマンションの往復。一人でドライブや旅行に出かけることもなかったため、彼の話がすごく新鮮なものに感じた。
◆列車が出発して1時間経っても話が終わらず…
ところが、男性は相当な話好きだったらしく、それも自分が一方的に喋るだけ。次第に話に付き合うのが億劫になったそうだ。「マシンガントークでしたね。それも早口でまくし立てるような口調で、もし営業でこんな喋り方をされるとちょっとキツいなって。もちろん、悪意がないのはわかっていましたし、隣の席なのであまり失礼な対応はできません。それでも途中からは適当に相槌を打つだけ。実は、その週は残業続きでずっと忙しかったこと、アルコールが回ってきたこともあって強烈な睡魔に襲われたんです」
気がつくと瀬戸大橋は越えており、出雲市駅を出発した『サンライズ出雲』と合流する岡山駅もすでに通過。男性の話も今回の四国旅行から若いころのバックパッカー時代の話になり、話が終わる気配は一向に見えなかった。

