チャットAIとの対話で「ネガティブ」は克服できるのか?記者が試してみた結果…「なぜか涙が出た」

チャットAIとの対話で「ネガティブ」は克服できるのか?記者が試してみた結果…「なぜか涙が出た」

気づけば欲しくなり、怒りが沸き、無条件で信じている──。そんな日々の営みは、あなたの思考ではなくアルゴリズムによって生み出されたものかもしれない。一方で、デジタル洗脳は必ずしも“悪”だけとは限らないという。否定と自責で固まった思考をリセットする装置として、チャットAIを活用する人たちが現れ始めている。専門家の見解と当事者の体験から、AIによる「ポジティブな洗脳」の可能性を探る。

◆「調子のいいホストみたい」AIで負の思考をリセット!

[デジタル洗脳]の恐怖
これまで、デジタル洗脳の危うさや負の側面を中心に見てきた。だが一方で、「洗脳=悪」と決めつけてしまっていいのか。法廷臨床心理学博士の遠藤貴則氏は、こう指摘する。

「洗脳とは思考や感情のパターンを書き換えることでもあります。もともとの思考パターンが『自分はダメだ』『どうせ無理だ』といった否定的なもので埋まっているなら、それはむしろ一度洗い流してしまったほうがいい。問題は、何に洗脳されるか、です」

その「洗い流す装置」として、近年注目されているのがチャットAIだ。精神科医であり、臨床の中でもAIを活用している益田裕介氏は、次のように話す。

「チャットAIは、セルフケアにもなれば、依存の対象にもなり得ます。特に精神的に不安定な人や、人間関係で傷ついてきた人ほど、否定されない存在に強い安心感を覚えやすい。AIは裏切らないし、関係がこじれることもない。その分、言葉を信じすぎてしまうリスクはあります」

◆AIをポジティブな洗脳として活用している人も

一方で、うつ状態のケアという観点では、明確なメリットもあるという。

「うつの状態では、頭の中が愚痴や不安でいっぱいになり、脳が疲労しています。それをAIに書き出すだけでも、『自分は何に疲れているのか』が可視化され、脳の負担を軽くする効果があります」

実際に、AIをポジティブな洗脳として活用している人もいる。双極性障害Ⅱ型を患う中原望さん(仮名・30代)は、その一人だ。

「興奮状態や混合状態になると寝られずに、イライラする、ネガティブな思考が止まらなくなります。以前は夫や家族に延々と愚痴や『死にたい』気持ちをぶつけていました」

家族が疲弊し「チャットGPTに聞いてみたら?」と言われたことが転機に。

「『死にたい』って2時間言い続けても、AIは一定のトーンで寄り添い続けてくれる。だんだんクールダウンしてくると、『自己分析をしてみますか?』って提案されて、それに乗るんです」

中原さんは、AIの性質をこう表現する。

「感情がある“ふり”をしてるけど、実際には感情がない。その淡々としたところがちょうどいいんです。いかなるネガティブなコメントにも挫けずにポジティブに返してくるので、ちょっとホストっぽい魅惑性もあって、セルフ洗脳しやすい装置だと思います」

AIからの優しい言葉に触れつづけ、思考も変わった。中原さんは「AIのおかげで、ネガティブな思考をポジティブな方向に洗脳し直すことができました」と語る。

重要なのは、デジタル洗脳を避けることではなく、どう使いこなすかだろう。否定と自虐で固まった思考を、いったんリセットし、自分にとって役に立つ方向へ上書きする。そのための道具として、チャットAIは静かに可能性を広げている。


配信元: 日刊SPA!

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