2000年代は『西麻布エーライフ』などのナイトクラブが夜を彩り、煌びやかな大人で賑わった麻布。
冬の某日、編集部が麻布エリアで人気のナイトスポットに潜入調査を敢行すると、集う大人にも遊び方にも変化があった!
かつてこの街は“自己顕示”の塊だった。
高級シャンパン、ひと目でわかるブランド品、ハイステータスな誰かと繋がること……。だがそんな麻布の夜が、大きく変化していた。
外資系や円熟味を増したヒルズ族など、近隣のハイブロー界隈がアートに浸り、ゆるりと寛ぐ
『WALL_alternative』
西麻布交差点の程近く、シンボリックな煉瓦造りのビルにあるワインバー併設のアートスペース『WALL_alternative』。ここに集うのは、日頃からアートを嗜む人やワインの知識を学ぶ人など、高感度な大人ばかり。
バーマスターが日本各地のワイナリーを巡って仕入れたナチュラルワインを手に、現代アートに触れて感性を磨いているおふたりに編集部がお声がけした。
バーカウンターで並々ならぬオーラを放っていた、音楽教師の女性。
私立小学校で教鞭を執る彼女は、「上質なものだけを身に纏うようにしている」と断言し、シャネルやカルバン・クライン コレクションを凛と着こなす。
この夜は、バーカウンターで隣になったほかの客らと建築や敬愛するオペラ歌手、マリオ・デル・モナコについて語っていた。
続いて、友人とアートスペースを回遊していた、広尾に居を構える34歳のアパレル系IT企業勤務の女性。
「AMERI VINTAGE」が好きという彼女のこなれたファッションセンスが、今の街の空気によくなじむ。
普段はピラティスやバレエ、さらにはサーフィンまで嗜み、シンガーソングライターのジャック・ジョンソンの曲をよく聴いているという。
最近、現代アートに興味を持ち始めた彼女は、展示が変わるごとにここを訪れ、作家やほかのお客と話すことで知識を深めていると教えてくれた。
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『WALL_alternative』は、ギャラリーにカウンターバーが併設されたアート空間。日本ワインを中心に世界中のナチュラルワインがそろう。4種飲み比べ¥2,000~。
麻布十番の夜遊び終着地点的ラウンジ『KJ TOKYO』は朝まで営業しているが、派手なコールとは無縁。
話を聞いた34歳と31歳の男女によると、気が置けない仲間と語り、歌い、気ままなひとときを過ごすのが主流だとか。
鎧のようなブランド服も鳴りを潜め、ユニクロやZARAなどファストファッションから好みのものを選び取るのが主流。そこには他人の目を重視したフィルターは皆無だ。
西麻布に居を構える37歳の広告ベンチャー勤務の女性も、そんな「脱・背伸び」を体現するひとりだ。
「ブランドには一切興味がない」と断言する彼女は、ユニクロなどプチプラで購入した等身大のアイテムを身に纏う。
その分、投資先は潔く「家賃とお酒」だそう。今夜はここでJO1のナンバーを口ずさみ、常連たちと他愛のない話に花を咲かせる。
まさに今の麻布が求める開放感そのものだ。
一方で、中目黒から遠征してきた人材業界で働く31歳の男性も、このラウンジの自由な空気に魅了されている。
驚くべきは、飲み代にひと晩2〜5万円をさらりと投じる経済力を持ちながら、身に纏うのはユニクロであること。
サウナやゴルフでストイックに整える彼が、夜の仕上げに歌うのは、十八番のコブクロだった。
自分の“好き”や価値観を確立した大人たちが自己充実を求めてラフに楽しむ……それが、令和の麻布の流儀だ。
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『KJ TOKYO』はカラオケも楽しめる“隠れ家的ダイニングバー”。ドリンク130種以上、フード約40種類と豊富で、前菜¥500~と良心的な価格も魅力。


