◆ブームは文化として定着するのか?
今後、このブームはどうなっていくと予測されるのか。椎木さんは「定着化する流行と一過性のブームで終わる流行」を次のように分析する。「ブームにはいろいろなパターンがあると思っています。例えばタピオカは、ブームが去った後も、今では定番の飲み物の一つとなって、好きな人は好きで定着化していますよね。
そのブームが、本質的に生活に根ざすものかどうかが分岐点だと思います。タピオカは、当時の言葉で言う『映える』からというだけでなく、単純に『美味しい』とか『その時間を過ごすのが楽しい』といった、もっと本質的な楽しみ方があった。
乱立したタピオカ店は淘汰されましたが、今ではバリエーションも豊富になり、品質を重視したタピオカ専門店が『TEAブランド』へと転換したことで、若者の間では定番のテイクアウト商品として根付いています。
一方で、一過性のブームは、本質的な価値よりも『なんとなく流行ってるから』という気持ちが先行してしまっている。今のシール帳は、その両方の側面があると思うんです。
もともと、シールを貼る行為そのものが楽しい、リラックスになる、自分の世界観を表現したいといった本質的な価値を感じている子もいれば、ブームだからやっているという子もいる。
今の過激な盛り上がりが続けば一過性で終わるでしょうし、企業側がちゃんと対応して生産を増やしたりして、誰もが心から健全に楽しめるものになれば、定着する可能性もあると思います」(椎木さん)
◆世代を超えて一緒に盛り上がる“共通言語”
また、不況で生活が苦しいなかで、低価格の数百円で楽しめるというのも魅力にある、と椎木さんは話す。「『低価格ドーパミン商品』という言葉があって、高価でなくても興奮や満足感を得られる商品という意味だそうです。自分への“小さなご褒美”とでもいいましょうか。
ガチャガチャの中に『目印アクセサリー』というジャンルがあるのですが、傘の柄やリップクリームなどにつけて、自分のものだとわかるようにする小さなアクセサリーがあります。持ち物の盗難・紛失防止と可愛さを両立させた実用的なアイテムで、カプセルトイ市場では人気商品でもあり定番商品にもなっていて、日常の必需品となっています。
自分が欲しいものが出たときのドーパミンは、すごくありますよね。物価が上がって生活が苦しくなっているからこそ、ボンドロシールやガチャガチャのような自分への“小さなご褒美”が魅力になっている面もあると思います。
ブームに対して否定的な文脈で語られることも多いですが、良い部分もすごくあると思っていて。今って、アナログな作業が減っているじゃないですか。そのなかで、親子で一緒に手を動かして、『お母さんの時代も流行ってたんだよ』みたいな話をしながら楽しめる。
シール帳もそうですし、最近は編み物もすごく人気ですよね。AIだなんだと言われていますけど、みんなが好きなのって結局、『手仕事』なんだなという気がしていて。AI時代だからこそ、リアルな生活ではもっと人間らしくありたい、心豊かな時間を過ごしたい、という潜在的な思いがあるんじゃないかなと感じています。
世代は違っても、一緒に盛り上がることができる“共通言語”が出てきたというのは、すごく良いことだと思いますし、母親として嬉しいですね」(椎木さん)
【プロフィール】椎木里佳

X @rikashiikiamf

