
資料調査課は、資料の「料」と調査課の「調」をとって「リョウチョウ」とも呼ばれたり、「料」の偏の読みから「コメ」と呼ばれている。ドラマはその国税局資料調査課から派生した架空の部署、複雑国税事案処理室=通称「ザッコク」が舞台となっている。
ますます盛り上がるドラマ『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』。国税局資料調査課とはどのようなところなのか、元コメの佐藤さんに話を聞いた。
◆実はマルサの「強制調査」より怖い、コメの「任意調査」

――資料調査課という名前から地味で窓際族のような印象を抱くのですが、そもそも今回のドラマの舞台である「国税局資料調査課」(コメ)とはどのようなところなのですか?
佐藤:国税局といえば、1987年に公開された映画『マルサの女』で「国税局査察部」、通称「マルサ」が有名ですよね。国税局査察部は、国税通則法に基づく調査で、裁判所の令状をもって強制調査を行う部署です。
マルサの調査は、徹底した内偵により、脱税した所得の証拠(タマリ)で「裏付けとなる資産を把握できた事件が対象」になります。世間ではそのマルサが税務当局における最強部隊のように認識されていますが、徴税に関しては国税局資料調査課(コメ)のほうが圧倒的に怖い存在です。
コメはマルサとは違って、蓄積された膨大なデータをもとに調査対象者を選定し、(納税者による「明示の承諾」が必要とされますが)タマリがなくても令状なしで調査することができます。
――ドラマでも、調査に入る前には「明示の承諾」が必ず描かれていますね。
佐藤:本気で脱税している者は国内にタマリなんて残さないし、簡単にバレるようなところに財産を残さないですから。コメは、マルサが調査しない、あるいは調査できない複雑困難な事案や証拠不十分な事案を扱うのです。
マルサとコメの最大の違いは「調査」にあります。マルサは「強制調査」であるのに対して、コメは「任意調査」。この「強制」と「任意」という言葉から、コメの「任意調査」は拒否できると思ったら、それは考えが甘いです。
「任意調査」は「強制調査」に対する対義語なだけで、法律上は、納税者は質問に答えたり調査に応じたりしなければならない受忍義務があります。
マルサの「強制」は、国税通則法(旧国税犯則取締法)という法律に基づいて裁判所から令状を取った調査ですが、コメが怖いのは、脱税の確実な証拠がなく、令状がなくても調査に着手できる点です。
各種マスコミなどの蓄積データ、申告データから「これはクサい」と思う案件を探し出して調査します。無予告、つまり事前通告をせずにターゲットの会社や店舗などに踏み込むことができるのです。
――ドラマのなかでも松嶋菜々子さんが怪しいターゲットを見て、「ぬかの臭いがする」と決め台詞を言うシーンもありますね。
佐藤:コメは、マルサが手を出せない案件まで扱うことからいえば、“税務調査の最後の砦”ともいえる。少数精鋭で、配属される職員には高い調査能力が求められる、そんな部署が資料調査課です。
ただ、コメとマルサは調査の性質に違いはあるものの、不正をただす部署として目指す方向は同じ。お互いのノウハウを浸透させるべく、査察部と課税部の間では人事交流も行われています。
◆国税が踏み込んだとき……調査現場のリアルとは?

――ドラマでもザッコクが調査に踏み込むと、調査対象者は焦ったり、余裕しゃくしゃくだったり、さまざまな姿が描かれています。実際、コメが踏み込んだら、対象者はどのような反応をすることが多いですか?
佐藤:ほとんどの人は怒りますね。コメが調査に入るのは売上が数十億円以上、従業員も何十人何百人もいるような、それなりの規模の会社です。そこに突然、「国税局です」と来られたら、社員の手前、自分が脱税犯のように見られるわけですから。怒るのも当然だと思います。
――その怒りに対して、コメはどのように対応するのですか?
佐藤:私は、常にポーカーフェイスを心がけていました。相手が怒っても、笑っても、泣いても、こちらは感情を表に出さない。淡々と対応します。ここで下手に謝ったり、感情的になったりすると揚げ足を取られてしまうので、乱暴な言葉は絶対に使わず、非常に丁寧に対応していましたね。

