「あなたは母を野垂れ死にさせる気か」…好きなように食べて、寝て、1人で自由に生活したい90代母。心配のあまり栄養と介護を押し付ける娘が、ケアマネに突きつけた“理不尽な解雇”

「あなたは母を野垂れ死にさせる気か」…好きなように食べて、寝て、1人で自由に生活したい90代母。心配のあまり栄養と介護を押し付ける娘が、ケアマネに突きつけた“理不尽な解雇”

「親には安全に、長生きしてほしい」多くの子どもが望む願いですが、その「安全」を追求しすぎると、必然的に親の生活は管理されることになります。 一方で、親自身は多少のリスクがあっても、これまで通り自由に暮らすことを望むケースが少なくありません。本記事では、西川満則氏、福村雄一氏、大城京子氏、小島秀樹氏共著の書籍『終活の落とし穴』(日本経済新聞出版)より、親の意思を置き去りにしてしまう家族の心理と、そこにあるべき本当の支援について解説します。

家族が陥りやすい過干渉のリスクと、本人の尊厳を守るための境界線

90代の一人暮らしの高齢女性がいました。自由気ままに1人で過ごしたいと思っている人でした。好きなように食べて生活したい。サービスとしては、訪問看護が週2日、訪問介護(ヘルパー)を週3日利用していました。本人はそれぐらいのペースでいいし、もし悪くなっていったらもうちょっと来てもらえればいい。それでもこのままがいいし、娘もつかず離れずでいい、という思いでした。

しかし娘さんはお母さんのことを心配しすぎて、食べ物なども、「あの栄養が足りないからこれを食べて」と言って、いろいろな食べ物を持って行きます。「1人になる時間が多いと心配という理由で、デイサービスに行かせたい」と言
い出しましたが、本人は行きたがりません。本人は気ままでいいと言っているし、今のペースでいいと言っているので、娘さんからしたらそんなに楽なことはないと思います。自分のことは自分でできており、大きな介護が必要なわけではなかったのです。

しかし娘さんからすると、「心配で仕方がありませんし、母親は私の言うことを聞かないので、本人を説得させてください」と言ってきます。「本人にとって嫌なことになるので、説得させるのは難しいと思う」と娘さんにお伝えしても、理解してくれません。本人も、やはり嫌だと言います。娘さんは「あなた(ケアマネジャー)は母に野垂れ死にさせろと言っていることと一緒ですよ」と言われました。

「そうではなく、野垂れ死にではありません。食欲もありますし、今は好きなものを、本人が食べたいものを食べればいいのではないでしょうか?」と言っても、娘さんは「私はこんなに母のことを思っているのに、なぜ母は拒絶するのだろう」と言います。

「あなた(ケアマネジャー)は分かっていない、あなたのやっていることは野垂れ死にさせること。あなたはもう少し勉強しなさい」と言われ、結局、ケアマネジャー交代ということになりました。自由や尊厳を優先するのであればある程度のリスクや危険を伴いますし、安全を求めるのであれば管理が伴います。娘さんの親を思うお気持ちも十分理解できるのですが、思いが強すぎると、強制や管理になってしまい、1番大切な本人の意思は埋もれてしまいます。

認知症によって本人に気持ちを聞いても分からない状態だったとしても…

例えば認知症になり、本人はずっと家にいたいと思う気持ちに反して、最終的に施設入所になったという結果があったとします。しかし、そこまでのプロセスはさまざまです。

例えば、家にいられるようにみんなで話し合っていろいろと工夫してきたけれども、症状も進行してしまって、施設入所もやむなかったという場合もあります。一方で、そうではなく、認知症になっていて本人の気持ちはどうせ分からないから施設入所、と、ほぼ自動的に決めてしまうのでは、その両者に雲泥の差があります。

ACP(※)のポイントは、やはりプロセスがどうであるか、です。

※Advance Care Planningの略称で、もしものときのために、望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームなどと繰り返し話し合い、共有する取り組みのこと。

もし実現できなかったとしても、実現を目指し、どのようにしようとしてきたかというところが大事なのではないでしょうか。ケアマネジャーの事業所によっては、「本人の意思とは関係なく、介護度が重くなれば施設入所を勧める」といった事業所もあると聞きます。「本人には、聞いても分からない」と発言する人もいます。事業所の考え方やケアマネジャー個人の考え方もいろいろありますが、ケアマネジャーは、本人の権利擁護と自立支援に向けた関りが基本です。

西川 満則 

福村 雄一 

大城 京子 

小島 秀樹

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