今から10年ほど前に、川久保圭介さん(仮名・34歳)が経験したのも、そんな体験だった。

◆「デキる自分」の姿に酔っていた
「当時の自分は本当にイタい人間だったと思います。思い返すと本当に恥ずかしいですし、そのイタさを突きつけられることになって、今までで一番ショックな経験でした」当時、川久保さんは金融系の営業職として活躍していた時期のことだったという。
「割と成果が出せていたこともあって、2年目には新人の育成も任されていました。そうして面倒を見ていた新人の中に、気になる女性がいたんです」
その後輩女性に同行する際は、特に力が入った。
「自分はメリットを理詰めで説明して、断る理由を潰して契約に持っていく手法を得意としていました。彼女が取ってきたアポイントでも、その手法をフル活用して何本か成約することができたんです」
そうした努力の甲斐もあって、川久保さんが告白する形で付き合うことに。
「ただ、告白の時もやや強引に交際へ漕ぎつけた感もあったので、付き合うようになってからも『良いところを見せよう』と頑張っていた感じでした」
◆良かれと思っての行動は迷惑客そのもの
奮発して高級店で食事をしたり、彼女が好きなテーマパークに宿泊込みで訪れたり、普段のデートでも彼女に喜んでもらうため努力した。しかし、そうした中で川久保さんの悪い癖が出てしまうことがあったという。「自分は元から物事が計画通りに進まない状況が苦手で、計画を妨害するものがあるとイライラしてしまうタイプでした。デートでそうしたことが起きると、露骨に態度に出てしまっていたんです」
飲食店で料理が出てくるのが遅かったり、タクシーが道を間違えたり、旅行先のホテルの料理がイメージと違っていたり。そうしたことがどうしても許せなかった。
「料理が出てくるのが遅い時は、なぜ遅いのか説明を求め、タクシーが道を間違えた時には運転手に執拗な値引きを求め、料理のイメージが違うと思ったら、スマホの画面を突きつけて出し直させたりしていました。当時の自分は、そうした行動が彼女に『自分のために戦ってくれている』と思ってもらえると思い込んでしまっていたんです」
だが、デートを重ねるにつれ、彼女との仲は深まるどころか、溝ができていく感じがした。

