男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:「結婚は考えられない」と言っていた彼氏から、プロポーズをされた女。勝因は?
亜子との初デートが終わり、僕たちは店の外へ出た。真冬の寒さはだいぶ和らぎ、少しだけ春の足音が感じられる夜だった。
「宏樹さん、ごちそうさまでした」
実際に会うのは初めてだったけれど、亜子とはすごく気が合う。この先、良い感じで進みそうな気がしていた。
「すっごく楽しかったです。またすぐに会いましょうね」
「そうですね。ただ、3月は仕事が忙しいので…。4月とか?」
「わかりました、じゃあ4月になったらすぐに」
「そうですね。じゃあ私はここで」
そう言って、ひらひらと手を振ってタクシーに乗り込んで行った亜子。その様子を見ながら、僕も笑顔で手を振り返す。
― あぁ、楽しかったな。
そう思っていた。でも残念ながら楽しかったのは僕だけだったようで…。結局この後、亜子とは一度も、再会することなく終わってしまった。
亜子と出会ったのは、マッチングアプリだった。綺麗な瞳に、すっと通った鼻筋が印象的な31歳。ヘルスケア関連の会社に勤めているという。
写真をスワイプすると、海外でヨガをしている写真と犬の写真も出てきた。まさに“ヘルシーな美人”という感じで、とても好感度が高い。
― 素敵な人だな。
そう思った僕は、すぐに亜子にメッセージを送った。
― ヒロキ:初めまして!お綺麗な方だったので、メッセージを送らせていただきました。現在丸の内に勤めている32歳で、ジムと犬が好きです。たくさんメッセージ来ていると思いますが、お話しできると嬉しいです。
すると数日経ってから、亜子から返信が来た。
― 亜子:初めまして、メッセージありがとうございます。犬、お好きなんですね。何か飼われていますか?私はオフィスが虎ノ門なのですが、タイミング合えばぜひ会いましょう。
そしてここから一気に話は進み、金曜の夜にデートをすることになった。
ただ、ここで迷いが生じる。亜子は中目黒に住んでいるらしいが、僕のオフィスがある丸の内の方からは少し遠い。しかし、彼女の家に近すぎるのも下心があると思われそうだ。
― 場所、どこにしようかな。
日程は決まったものの、店を決められずにいた。
だから前日の夜に、亜子に聞いてみることにした。
― ヒロキ:明日、何系が食べたいとかありますか?あと場所なのですが、恵比寿でもいいですか?
一応、日比谷線沿いを提案してみた。オフィスから家までの動線内だろうし、ベストかなと思ったからだ。
― 亜子:恵比寿、助かります!ありがとうございます。何系でも良いのですが…和食とか?
― ヒロキ:和食ですね、わかりました。お店、探しておきますね
こうしてエリアは無事に決まった。あとは店を選ぶだけだ。その夜色々と考えた結果、僕は恵比寿にあるカウンター席がある和食の店にした。
そしてデート当日の朝、僕は亜子に店の詳細を送り、あとは夜に会うだけになった。
― ヒロキ:本日、こちらに19時半でお願いします
― 亜子:おはようございます、わかりました。では19時半に!
こうして、僕たちの初デートがやってきた。
そして約束の19時半。恵比寿駅で待ち合わせようかとも思ったが、人目もあるだろうし、店集合にした。
19時半少し過ぎくらいに到着して店の人に僕の名字を伝えると、「あちらのお席です」と案内される。
既に亜子はカウンター席に着いており、僕に気がつくとわざわざ立ち上がって挨拶をしてくれた。
「初めまして、宏樹です」
「初めまして、亜子です」
「待たせちゃいましたか?すみません」
「いえいえ、ちょっと早く仕事が終わっただけなので」
お互いにまずはビールを注文し、少し緊張しながら初デートが始まった。
カウンター席の良いところは、テーブル席と違ってお互いをまっすぐ、正面から見つめなくて良い点だと思う。
特に初対面では、カウンター席に限る。気まずさもないし、テーブル席よりもはるかに話しやすい。
「亜子さん、お綺麗ですね!アプリで見た時から、思っていたのですが」
「そんなそんな…」
「亜子さんは、どうしてマッチングアプリを使っているんですか?必要なさそうなのに…」
「いや、私は…」
しかし亜子の声が少し小さくて、聞こえない。だから僕は、席を少しだけ亜子の方に近づけた。
「亜子さん、ごめんなさい。何ておっしゃいましたか?」
「あ、声小さかったですか?カウンター席だし、他のお客様もいるので大きな声は迷惑かなと思って」
「そうですよね。さすがの気遣いです」
「いえいえ。で、何の話でしたっけ?」
そう言いながら、亜子がワインをオーダーしたので、つられて僕もワインをオーダーする。
「なんでマッチングアプリを使っているんですか?という質問でした。でも、話したくなければ、本当に大丈夫です」
「そうでしたね。私は周りもみんな使っているし、真剣に良い人を探したくて。宏樹さんは?」
亜子はきっと、モテるだろう。過去の恋愛の話も気になる。でもこれ以上踏み込むのは失礼な気もして、僕は自分の話をすることにした。
「僕も同じです。真剣に、結婚できる相手を探しています」
「宏樹さんも、出会いとかありそうなのに」
「僕は周りがほぼ結婚していって、全然出会いがなくなりました。なのでアプリを使うことにしたんです。でも亜子さんのような素敵な方に会えて、嬉しいです」
「宏樹さんって、いい人ですよね」
「どうなんでしょうね。前の彼女には、『仕事ばかりでつまらない』って言われましたけど」
「そうなんですか?前の彼女さんとは、いつ別れたんですか?」
ここからお互いの恋愛話になり、一気に距離感が近くなれた気がする。初対面の印象が大事だというけれど、僕たちのデートは、とてもスムーズに進んでいった。
そして気がつけば、あっという間に3時間が経っていた。
「亜子さん、すごく楽しいです。初対面でこんなこと言うのもアレですが、また会えたら嬉しいなと思います」
「本当ですか?嬉しいです」
こうして外へ出て、亜子がタクシーに乗るのを見届けてから、僕も帰路へついた。
しかしこの後、結局亜子から連絡は来なかった。自分から何度か連絡をしてみたものの、返信の時間や内容も含めて、何となくそっけない。
ただ、僕もバカではない。
― あぁ。ダメだったんだ…。
そう気がつくのに、時間はかからなかった。
▶前回:「結婚は考えられない」と言っていた彼氏から、プロポーズをされた女。勝因は?
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:3月1日 日曜更新予定
女が一度のデートで諦めた理由は?

