「1日10本のストロング缶」を飲み続けた20代男性のゆがんだ日常。なぜ飲まずにいられなくなったのか…ルーツは「カフェイン依存」にあった

「1日10本のストロング缶」を飲み続けた20代男性のゆがんだ日常。なぜ飲まずにいられなくなったのか…ルーツは「カフェイン依存」にあった

◆酔って書いた文章のほうが面白い?


そんな楽しい学生生活も終焉を迎える。就職活動が始まったのだ。当時は卒業論文を必死に執筆していたため、大学院進学を目指していた。しかし、「稼げない」のと「このままずっと酒浸り」という生活が待ち受けていると思うと怖くなり、慌てて髪を切ってリクルートスーツを買ってもらう。

そして、いざ履歴書を書き始めるが、面白く書けない。当時、レポートも論文も酒気帯びで書いており、所属していた「ジャーナリズム研究会」のフリーペーパーの記事も酔っ払って書いて、翌日シラフの状態で整えていた。

社会人になって、まるで同じような状態に陥るのだが、この頃は「面白いアイデアは酔っていないと考えられない」という思いから、ウォッカを煽りながらレポート、履歴書、記事を書いていた。しかし、幸か不幸か、酔って書いた文章のほうが勢いあって面白い。就活ではエントリーシートの通過率は9割を超え、レポートもA判定をもらった。フリーペーパーの記事も酔っているときに書いたほうが、新たな視点が生まれるのだった。

しかし、結局これは「いい文章を書かないといけない」というプレッシャーに押し潰されそうになったため、アルコールに逃げただけである。しかも、就活が長引くにつれ、院試の時期が近づくにつれ、焦燥感に駆られてしまい、自律神経が乱れていく。病院で薬を処方してもらったが、それもウォッカで流し込んだ。

◆中島らもとの共通点を見出してしまう


そんな状態の時期にサークル内で「酔っ払っていないと文章が書けない」と言っていたところ、先輩から「まるで、中島らもだな」と言われてしまう。

筆者は『頭の中がカユいんだ』(集英社)などは読んでいたが、『今夜すべてのバーで』(講談社)は知らなかった。そこで、その日の帰り、ブックオフに寄って買った。そして、読み始めたところ、一気に読み終えてしまい、そのままウォッカを煽ってしまった。

あまりによくトリスを買いに行くので、近所の酒屋の主人がウィスキーグラスをおまけに紙袋に入れてくれたことがある。

「これは普通、リザーブにつけるおまけなんだけどね」

おれは、それ以来その酒屋へ二度と行かなかった。“憐れまれた”と思ったのだ。

先輩はこの文章に共感できると言っていた。ただ、2日にいっぺんコンビニで同じ店員にウォッカの会計をさせている筆者は、「まぁ、そこは……」と納得はしたものの、そこまでこのエピソードは染みなかった。

それよりも、ミステリーが書けない苦労から、執筆中にも関わらず酒に手を出すようになり、それがアルコール依存症のきっかけとなったというくだりは、筆者も近しいところがあったため、読んでいて怖くなった。


◆出版社で働くきっかけも、酒の勢いで


同じ頃、吾妻ひでおの『失踪日記』と『失踪日記2 アル中病棟』(共にイーストプレス)も読んだ。やはり、物書きはストレスやプレッシャーに耐えられなくなると、酒に走ってしまうのか……。

ただ、中島らもと吾妻ひでおよりも学生時代に読んで怯えた文章があった。それが、筒井康隆のショートショート『あるいは酒でいっぱいの海』(河出書房新社)に収録されている「アル中の嘆き」だ。

おれは今、地獄にいるんだ。そう。アル中で死んだ人間が落ちる地獄だ。いくら酒を飲んでも酔わない! こいつはまったく、死ぬ以上の苦しみだぜ! アル中にとってはな。

酒を飲むのは好きだが、結局のところ「酔いたい」「眠りたい」ために酒を飲むのである。それがいくら飲んでも酔えないのであれば、釜茹でなどよりも本当の地獄だなと読みながら震えてしまった。

そこで、恐れをなして「物書き」を志すのを辞めれば、健康的な未来が待っていたかもしれない。しかし、西村健太が『苦役列車』(新潮社)で芥川賞を受賞したのも同じ時期である。「酒に飲まれながらも、執筆活動を続ける物書きはカッコいい」と愚かにも思ってしまったのだ。古今東西、そうした作家たちが悲惨な末路を辿っているのはわかっている……。それでも、実感がまだ湧かなかったのだ。

そして、ウォッカを煽って履歴書を書き、そのまま酔った勢いで「働かせてください」とメールを送った出版社に、アルバイトで入ることになった。この半年後、社会人生活、つまり本格的なアル中人生が始まるのだが、その詳細はまたいずれ……。

<TEXT/千駄木雄大>

―[今日もなにかに依存中]―

【千駄木雄大】
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
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