
「世界幸福度報告書」2025年版によれば、スウェーデンが4位、日本は55位と大きな差がついている。夫婦共働きが一般的である点は両国とも同じだが、なぜここまで違いが生まれるのだろうか。スウェーデン在住25年で『子育ても仕事もうまくいく 無理しすぎないスウェーデン人』(日経BP)の著者である佐藤吉宗氏は、家事と仕事を柔軟にやりくりする生活を送る1人だ。同書より、著者の日常を手がかりに、スウェーデン社会が「両立しやすさ」を実現している理由を探る。
朝ごはんづくり、息子の送迎…スウェーデン在住パパの日課
ストックホルム中心部から25kmほど離れた自宅。朝7時、ピカチュウの形をした黄色の目覚まし時計で息子が目を覚ます。
まず、日本の子ども向け教育番組を見せながら朝ご飯の準備だ。15分の番組が終わる頃には朝ご飯はできている。食事の後に息子の歯を磨き、服を着替えさせ、8時過ぎに学校に連れて行く。これが私の毎朝の日課だ。
パートナーとは、私がスウェーデンで博士課程在籍中に彼女が京大からスウェーデンに交換留学してきたことが縁で知り合った。パートナーは交換留学後に日本で事務系職として勤務していたが結婚を機にスウェーデンに渡航、こちらで出産後にリスキリングのための職業大学教育を受け、醸造技術者として小規模ビール醸造所(マイクロブリュワリー)で働いている。
勤務先の醸造所はストックホルムにあるものの、片道の通勤に1時間半かかるため、パートナーは毎朝6時半には家を出ている。帰路も同様に時間がかかるため、帰宅は18時過ぎになる。仕事の内容上、リモートでの勤務が難しい。そのため、息子の送り迎えはもっぱら私の担当だ。
一方、私はというと2018年末からスウェーデンのAI(人工知能)コンサル企業でデータサイエンティストとして勤務したのち、同社から出向していた大手民間銀行であるSEBで勤務している。企画やプログラミング、学術議論が中心の仕事であるため、在宅での勤務もやりやすく、時間的な融通も利きやすい。
16時に息子を迎えに行って帰宅した後は、まだ仕事が残っていれば息子にテレビを見せるなどしつつ1時間ほど仕事をする。
仕事は夕方に切り上げる日もあれば、21時半以降に再開する日も
日によってはミーティングが17時まであることもあるし、時間があれば仕事を切り上げて息子と遊ぶこともある。息子が4歳半になった頃からは一緒にボードゲームでよく遊んでいる。小学生になった息子は、今はタブレットを使ったデジタルゲームにも夢中だ。
17時半頃から夕食の準備を始め、出来上がった頃にパートナーが帰宅する。そして、みんなで一緒に食事をし、その後はスウェーデンと日本のテレビニュースを見るなどしながら過ごす。
朝夕の送り迎えをする私の場合、十分な勤務時間が日中に確保できないことも多い。そんなときは、子どもを寝かしつけた後の夜21時半以降に仕事をしている。
私の仕事では週の勤務時間の一定の割合をスキルアップに充てることが認められている。今いる業界ではAIの技術やプログラミング、データ分析のツールが日進月歩で進化しているため、自分で勉強していくことが欠かせない。夜の時間はそのための勉強に使うことが多い。
日本人の「9割」の労働時間で年収は「1.2倍」
スウェーデンでは、わが家のように夫婦共働きが一般的だ。フルタイムの勤務時間は1日7時間、あるいは8時間。だから、それぞれの家庭では保育所あるいは学校への送り迎えと仕事との両立に腐心している。夫婦で送りと迎えをそれぞれ担当することも一般的だ。
職場でも、朝早くから出勤して迎えのために15時には退社する社員もいれば、子どもを送ってから出勤して夕方までいる社員もいる。残業は基本的にないため17時を過ぎれば社内はガラガラとなる。
OECD(経済協力開発機構)の統計では、23年のスウェーデンの1人当たり平均年間総実労働時間は1431時間で、日本の9割以下に過ぎない。しかし、スウェーデンの人々は仕事をしていないわけではない。購買力を考慮して比較した1人当たりのGDP(世界銀行、24年)はスウェーデンが日本の1.37倍で、平均年間賃金(OECD、24年)も1.22倍に上る。
一方で、子育てに関しては日本以上に夫婦が協力して行っており、ユニセフが25年に発表した子どもの精神的幸福度は先進国36カ国中14位と目立つ順位ではないものの、日本の32位を大きく上回っている。
