年金事務所で判明した「高年収なのに年金が少ない」理由
タクマさんが年金事務所の職員から告げられたのは、信じたくない事実でした。
「おっしゃるとおり、就職していなかった期間が長かったため、一般的な会社員と比べて年金の加入期間が短くなっています。また、所得についてボーナスの割合が高く、ボーナスには標準賞与額として上限が設けられているため、年金額に十分反映されていないと考えられます」
「ボーナスが高額な人」が陥りやすい誤解
日本の年金制度は、「1階部分」と「2階部分」からなる2階建て構造になっています。1階部分にあたるのが「国民年金」で、日本に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が加入する仕組みです。
国民年金の受給額は、加入していた期間によって決まります。満額を受け取るためには、40年(480月)の加入が必要で、満額は年額83万1,700円です。加入期間が短くなると、その分、将来受け取れる金額も少なくなります。
一方、会社員や公務員などが加入するのが、2階部分にあたる「厚生年金」です。加入者は「第2号被保険者」と呼ばれます。
国民年金も厚生年金も原則65歳から満額受給が可能です。また、第2号被保険者の場合、国民年金に加えて「老齢厚生年金」を受け取ることができます。
なお、老齢厚生年金の金額は、加入期間中の報酬に基づいて計算されます。2003年4月以後の加入期間については、次のとおりです。
平均標準報酬額 ×(5.481/1,000)× 加入月数
平均標準報酬額は、標準報酬月額と標準賞与額の合計を、加入期間で割って算出されます。ただし、標準報酬月額には上限があります(65万円)。また、標準賞与額も1回の支給につき150万円が上限です。
このため、いくら年収が高くても、タクマさんのように月々の給与が低く、その代わりに賞与の割合が大きい給与体系の場合、平均標準報酬額が思ったほど伸びないことがあります。
これ以外にも、たとえば役員報酬において「事前確定届出給与制度」を利用し、月額報酬を低く設定したうえで年2回の高額賞与で調整したとします。この場合、保険料負担は抑えられる一方、将来の年金額に影響が出る点に注意が必要です。
老後の“おひとり様”は月にいくら使える?
総務省の「家計調査報告」によると、65歳以上の高齢単身無職世帯における月の可処分所得は12万1,629円となっています。
「こんなはずじゃなかった」を防ぐために
タクマさんには、サッカー留学や世界旅行などで、国民年金を支払っていなかった期間が約10年ありました。また、高年収ではあるものの月給が抑えられ、賞与の割合が大きい給与体系だったことから、年金見込み額は月額12万5,000円と、平均的な水準にとどまっていたのです。
職員の説明を受け納得したタクマさんは、ショックではあったもののすぐに切り替え、キャリアプランを変更することに。60歳以降も、年金を受け取れる65歳まで現在の会社で働き続けることにしたそうです。働く期間が延びれば、その分だけ年金額も増えていきます。
「身体もまだピンピンしてるし、この仕事、嫌いじゃないんだよね」
そう言って笑うタクマさんにとって、この選択は決して後ろ向きなものではありません。
年金額を正しく把握したうえで、現実的な対策を取ることが、将来の不安を減らす第一歩になると気づいたのです。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP
