恵比寿笑いの育て方|水やり・日照・冬越しの基本
恵比寿笑いは見た目のインパクトに反して、基本を押さえれば比較的育てやすい塊根植物です。ここでは、日照・水やり・冬越しを中心に、恵比寿笑いを健康に育てるためのポイントを解説します。
日照と置き場所
成長期の光量

恵比寿笑いは強い日光を好む植物です。
成長期にあたる春から夏にかけては、できるだけ日当たりのよい場所で管理するのが理想です。
屋外管理が可能であれば、直射日光の当たる環境でしっかりと光を当てることで、塊根は締まり、葉も健全に展開します。
特に現地球は、冬季以外は屋外での管理を強く推奨します。
ただし、塊根植物は急に強光に当てると株に過度のストレスを与えてしまうため、室内管理(後述)から屋外へ移す際は、半日陰から徐々に慣らすようにしましょう。
室内管理のポイント
実生株の恵比寿笑いは、屋外管理が難しい場合でも、適切な環境を整えれば室内管理のみで栽培することも可能です。
室内で管理する場合は、できるだけ窓際などの明るい場所に置き、十分な光を確保することが重要です。
日照が不足すると、塊根が徒長し貧相なフォルムになるなど、生育が鈍くなる原因になります。
特に成長期の恵比寿笑いは、光と熱を旺盛に求めるため、植物育成LEDライト(以下育成ライト)を補助的に使用するのも有効です。

日照があまり見込めない環境では、太陽光に近い光源であるフルスペクトルタイプであれば、育成ライトをメインの光源として使用しても問題ありません。
その場合は、株の天頂から30cm程度の距離を目安に照射すると、安定した生育が期待できます。


冬季は特に光量不足によって調子を崩しやすいため、室内管理では育成ライトを有効活用しましょう。
また、植物の成長には風(空気循環)も欠かせないため、室内管理の際は、必ずサーキュレーターを用いて室内の空気を循環させ、空気や湿度の滞留に注意しましょう。

水やりと用土、肥料、鉢の考え方
水やり|成長期と休眠期の違い
恵比寿笑いは夏季成長型の塊根植物です。
春から夏にかけて葉を展開し、活発に生育します。
成長期には、用土がしっかり乾いたのを確認してから、下の動画のようになるべく塊根に水がかからないよう注意しつつ、鉢底から勢いよく水が流れ出るまでたっぷりと水を与えます。
この“勢いよく流れ出る”ことがとても重要で、底穴から水が抜ける際に根の代謝で生じた有機酸などの老廃物を洗い流す「リーチング効果」が期待でき、鉢内環境を清潔に保ち、根腐れの防止にもつながります。
【用土の乾き具合のチェック方法】

塊根に水がかかっても大丈夫ですが、蒸れを防ぐためにもできるだけ早めに拭き取ってあげましょう。
一方、気温が下がり始める秋以降は徐々に水やりを控え、冬の休眠期には基本的に断水、もしくは極少量に留めます。
このメリハリが、根腐れ防止と健全な生育につながります。
ちなみに筆者の場合、冬場でも週に一度、用土表面が軽く湿る程度の水やりを行っています。
これにより、冬でも細根が枯れず、春の立ち上がりもよいからです。
また、適度な湿度が乾燥を好む根ジラミの発生を防ぐ効果もあるからです。
(以前、冬に完全断水した塊根植物を根ジラミにやられて大変だったので……)
あくまでも筆者個人の雑感ではありますが、管理方法を考える際の一例として参考にしていただければと思います。
施肥(成長期の管理)

恵比寿笑いの施肥には、を薄めて使う方法がおすすめです。
ハイポネックス微粉は少量で十分な効果があります。
500mlペットボトルに対して微粉を0.2g(約0.2ml)ほど溶かすと、塊根植物に適した2500倍の、安全な希釈濃度になります。
0.1ccの計量スプーンだとすり切り2杯。写真にある商品に付属の緑色の計量スプーンを使用する場合は小さい1g計量のほうで、かさ高3mmくらいです。
これを成長期に月1回あげるとよいでしょう。
【微粉がおすすめの理由】
過湿に弱い恵比寿笑いに最適の用土
恵比寿笑いは乾燥には強い一方で、過湿には非常に弱い植物です。
特に真冬の低温時の多湿環境は、根腐れや塊根の腐敗を引き起こす大きな原因となります。
用土は、水はけと通気性を重視し、軽石・赤玉土を主体とした配合がおすすめです。
初心者の方は、市販の多肉用培養土でもOKです。
筆者は関さんが経験則に基づいてブレンドしたガディンツキープランツの多肉用土に、小粒の加賀軽石という天然の軽石と、毎年秋に神奈川県山北町で入手する堆肥を、ともに少量加えた用土を使用しています。


株のパフォーマンスを見ながら、このように自分流の用土作りを試行錯誤するのも、結構楽しいですよ。
相応しい鉢

鉢に対する考え方は人それぞれですが、基本的には水はけと通気性が確保できていれば、どのような鉢でも問題ないと筆者は考えています。
即ち、「相応しい鉢」とは、用土のパフォーマンスに寄り添い、根の育成をしっかりとサポートできる性能を持った鉢。
そこで筆者がたどり着き、ほとんどの植物に使用しているのが素焼き鉢。
アースカラーの落ち着いた色合いと、誰が考えたのかこのオーソドックスなフォルムは、独特な造形美を誇る恵比寿笑いを、主役として存分に引き立ててくれます。


また、冬場に屋内管理へ切り替えた際にも、どんなインテリアにも自然と溶け込み、植物と暮らす楽しさを満喫させてくれます。

何よりも、4号鉢で200〜300円程度と手に取りやすい価格。
気負わず使うことができます。
冬越しの注意点
恵比寿笑いは寒さに弱いため、管理環境が12℃以下にならないよう注意しましょう。

冬場は屋外管理を避け、18℃以上ある室内で前述の育成ライトとサーキュレーターを用いて管理するのが安全です。
株の抵抗力が落ちやすい冬季に空気が動かない環境だと、カイガラムシや根ジラミなどの害虫が発生しやすくなります。
それらは気づかないうちにダメージを蓄積させ、翌成長期の生育に影響を及ぼす恐れがあります。
また、窓際に置く場合は夜間の冷え込みにも十分注意しましょう。
よくあるトラブルと対処法
蒸れ

高温多湿の環境では、蒸れが起きやすくなります。
特に梅雨時期は、屋外管理の場合も一旦室内に取り入れ、風通しのよい場所で管理することが重要です。サーキュレーターなどで空気を動かすだけでも、蒸れ防止に大きな効果があります。
根腐れ

根腐れの主な原因は、低温時の水やりや、過湿な用土です。
異変を感じたら、早めに鉢から抜いて根の状態を確認し、傷んだ部分を取り除いてから新しい用土に植え替えましょう。
そもそも、用土自体が適切でない可能性もあるため、本当に水はけのよい、多肉植物に適した用土なのかも見直しましょう。
生育不良

日照不足や水の与えすぎは、生育不良の原因になります。
葉の色や張り、塊根の状態を観察しながら、置き場所や管理方法を見直すことで、多くの場合は改善が期待できます。
とにかく、大切なのは日々の観察です。
恵比寿笑いの自生地「マダガスカル」の環境を知り、憧れの現地球へ
この記事では、恵比寿笑いの実生株を育てることに主眼を置き、その魅力や基本的な育て方を紹介してきました。
輸入株である現地球については、日本で入手可能な恵比寿笑いの“バリエーション”という位置づけで紹介しました。
ただ、実生株を購入し、丹精込めて育て続けていくと、そこは人の子。いずれは現地球を育ててみたいと、憧れの存在になっていくはずです。
ここでは、そんな「いつか現地球を迎える日」に備えて、恵比寿笑いがつい最近まで生きていたマダガスカルの気候を紹介します。

参考:Weather Atlas()
上の気候図を見ていくと、恵比寿笑いは一見すると夏型塊根というより、冬型塊根に近い性質を持っているようにも感じられます。
実際に野生の恵比寿笑いは、自生地ではそうした側面を持っており、そこに目を向けることは、将来あなたが現地球を育てる際の参考にもなります。
もっとも、日本で育てる恵比寿笑いは、実生株であれ現地球であれ、時間をかけて栽培環境に慣らしていくことで、生育のリズムは徐々に安定していきます。
こうして生育がすでに安定している個体を購入するのであれば問題ありませんが、根がカットされた状態で輸入された「ベアルート株」などを入手した場合、発根後にいきなり日本の環境で育てると、根腐れなどを起こして枯れてしまうリスクもあります。
そのため、遠くマダガスカルを離れ、異国で目覚めた株をまずは安定させる、という意味でも、上の気候図は参考になるはずです。
実際に筆者も現地球を入手した際は、株が落ち着くまでは現地の気候を意識した管理を行い、徐々に東京の気候に慣らし、現在はよい状態で根も活着しています。

まずは実生株を通して恵比寿笑いという植物を知り、育てる楽しさを味わう――その延長線上に、現地球という選択肢があると、恵比寿笑いにかける「夢」というのも、広がっていきます。
