歴史的建築物の数々を、楽しみながら散策。
まず紹介したいのは、古美術蒐集家のチョン・ヒョンピルが1938年に設立した韓国初の私設美術館『澗松美術館』。日本が統治していた時代に、朝鮮美術の国外流出を防ごうと個人で収集した美術品や工芸品、古書の数々は、今では国宝や文化財に。移り変わりが早い時代に、こうして古い建物を補修して残してくれて、感謝しています。
もう一軒、このエリアらしい美しい古い建物といえば、『チェ・スヌ旧宅』。国民的美術史学者の旧宅が、今では彼の美学と生活感覚を感じられる博物館となっています。簡潔なデザインの木製家具や白磁など、韓国の神髄である抑制された素朴な美を堪能できる場所。かつて住んでいた人の息遣いが感じられるのもいい。一人で訪れて、外の景色をぼんやり眺めていると、心が穏やかになります。『寿硯山房』も、『チェ・スヌ旧宅』と同じく1930年代の住宅を改装した伝統茶屋。もとは韓国近代文学史を代表する作家、イ・テジュンの生家で、店名は「文人が集う山中の家」という意味。ここで当時の文化人たちが交流を重ねていたのだろうと想像できます。いつも頼むのは、卵を落とした雙和(サンファ)茶か五味子(オミジャ)茶に、かぼちゃのピンス(かき氷)。ピンスは、かぼちゃやあずきが温かいまま氷にのっているのがユニークで、混ぜて食べる人が多いけれど、私は混ぜないで食べるのが好き。
伝統的な韓屋(ハノク)で営業する店は他にもあり、『チェクボニャン』は猫をテーマにした独立系書店。猫モチーフの雑貨もたくさんあり、店主が描いた猫のイラストがあちこちに飾られている。本を買うとその絵のカバーをつけてくれるのが嬉しい。作家を招いてのブックトークなどのイベントも頻繁に開催されています。
2025年の夏に移転オープンしたばかりの『ENCE MOMENT』も韓屋を活用している店。伝統と現代を調和させたリノベーションセンスが洗練されていて素晴らしいんです。展示、販売、デザイン相談のための部屋が自然に続くように構成された優雅な空間の中には、中庭や景色を眺めるスペースも設けられている。有機的でタイムレスなスタイルを謳うクラフトジュエリーも魅力。
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朝鮮王朝時代、漢陽(現在のソウル)の北側に築かれた城壁からその名がついた城北洞。ソウル市の北東部に位置し、北漢(プッカン)山や北岳(プガク)山、城北川が近くにあり、自然も豊か。伝統的な韓屋(ハノク)が残る地域もあり、高級住宅街としても知られている。今回紹介するエリアの最寄り駅は、地下鉄4号線の漢城大入口(ハンソンデイック)駅。

案内人シン・ヒョナさん
『GOOD MORNING GENERAL STORE』店主。城北で夫とともに、洋服から食器、文具まで、暮らしを豊かに彩る日用品を販売する傍ら、さまざまなイベントも開催している。Instagram@goodmorning_generalstore
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text : Shiori Fujii coordination : Hanae Koike cooperation : Jinon Kim & Hyejin Kim (TOKYO DABANSA), Sachiko Kumagai

