雇用契約に書かれた「残業に対する手当はありません」の意味
私の以前の雇い主であるAIコンサル企業と私が交わした雇用契約には「残業に対する手当はありません」と書かれてあった。サインする前に人事担当者に詳しく尋ねてみると「残業は基本的にありません。仮に残業が必要になったとしても、余分に働いた時間は別の日の勤務時間を減らすことで対応します。今いる従業員の過去の実績を見てみると、1年間の残業時間は最大でも10時間です」との回答だった。
契約書に明文化されていないことが心配ではあったが、その企業で働いていた6年間で残業を経験したことはなかった。
私のパートナーが勤務する従業員4人の小規模ビール醸造所では、製造の関係で月に数日1時間ほど残業することもあるが、基本的に17時までにみんな帰る。残業した場合は他の日に早く帰宅するなどの形で対応している。
また、彼女が以前勤務していた醸造用品販売会社では、残業は希望者のみ年2回計4時間ほどで、残業手当がきっちりもらえたという。
[写真2]公共交通機関は通学・通勤の時間帯に合わせて朝夕にバスや列車を増便するが、17時半を過ぎると本数が減る 出典:『子育ても仕事もうまくいく 無理しすぎないスウェーデン人』(日経BP)より抜粋
働き過ぎたら「別日に休み」が基本ルール
スウェーデンの「労働時間法」に、残業に関する基本的な規定がある。それによると、通常、労働時間は週40時間であり、残業は年間200時間を超えない範囲で月に50時間まで行うことができるとされている。
しかし、職種ごとに労働組合と業界の使用者団体が交わす団体協約によって個別の規定が設けられることも多く、その場合、残業に関しては法律よりも厳しい規定が課される場合が多い。また、手当・補償についても職種ごとに規定される。
残業した時間は別の日に休みを取るという形での補償が一般的のようだ。先ほどの例で挙げた自動車修理工の団体協約規定を見てみると、夜間の残業については別の日での勤務時間短縮に加えて特別手当が付く、と書かれている。
管理職は残業規定の“適用外”…頑張りすぎて燃え尽きるケースも
ただ、管理職になると話が異なってくる。管理職の場合、自分の裁量で日々の勤務時間を延長または短縮する余地が与えられているため、残業の規定が適用されず、また残業手当も支払われないことが多い。
SEBでの私のかつての男性上司(私と同年齢)は、一人息子の面倒を離婚した元パートナーと隔週に交代で見ていたため、平日の午後に早めに職場を後にすることもあれば、私のメールに深夜になって返事をくれることも多かった。
管理職では彼のように自分の裁量で勤務時間を決められる余地がある半面、1日8時間以上働いたとしても手当は出ない。そのため、成果を出そうと頑張りすぎて燃え尽きるケースなども報道で目にする。
仕事量が多すぎ、1日の通常の勤務時間でやりくりできないことが続けば、それは1つ上の上司と掛け合って、業務分担の再検討や人員の新規採用などを通じて解決することになる。
