
日本で一番高い電気料金、そして次世代半導体工場「Rapidus(ラピダス)」進出に伴う電力不足の懸念。多くの課題を抱える北海道経済の要となるのが「北海道電力」です。杉村太蔵氏は、同社の財務状況について「流動比率85%は本来なら絶対に手を出さない危険水域」と評価しつつも、地元出身の視点から、将来のポテンシャルには強い期待を寄せていると語ります。本記事では、杉村氏の著書『杉村太蔵の推し株「骨太」投資術』(文藝春秋)より一部を抜粋・編集し、関わりの深い地域だからこそ発見できる「地域の強みと期待値」の見極め方を解説します。※著書に基づく著者の見解を紹介するものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また、株価等の情報はすべて、書籍執筆時(2025年11月)のものです。
北海道経済の要となる「北海道電力」
北海道電力は、私の投資家としての真骨頂に近い思考なのですが、やはり地元北海道“愛”は、誰にも負けません! だからこそ北海道経済には、今後10年、20年で大きく発展してもらいたいのです。
……と申し上げつつ、じつはこの会社のポテンシャルは自分自身が北海道出身ということを割り引いても、ものすごく高いと確信しています。
まず、現状の北海道経済における最大の問題点は、電力です。北海道の消費者は、日本で一番高い電気料金を支払わされています。最大の要因は、ロシアのウクライナ侵攻によって多くの国々が、ロシア産のLNGガスの購入を控えていることです。結果として、各国のLNGガスの調達先が、ロシア以外のところに集中してしまい、価格高騰を招いています。加えて、この円安です。
北海道電力の最大の電力供給施設となっている苫東厚真発電所は、石炭火力発電所です。ここでは、160万キロワットを供給しています。ちなみに、北海道の電力使用量の平均は、350万キロワットです。夏場のピーク時が400万キロワット、冬場のピーク時が500万キロワットです。ほかの発電所を加えても、需給が苦しい状況です。
そんな現状に対し、泊原発は再稼働できていませんが、2025年の12月に3号機の再稼働について国と北海道の間で、同意がなされました。泊原発3号機が再稼働できたら、90万キロワットの出力があります。
じつは、この泊原子力発電所については、2025年8月に私も視察させていただきました。なんと3号機の建設費が約3,000億円であったのに対して、津波などの安全対策に約5,000億円かけたそうです。
実際にその現場を見せてもらいましたが、防潮堤の建設だけでも、地面から防潮堤を建てるのではなく、地下深く、もっとも硬い岩盤に土台を固定するような形で建設されていました。「とても頑丈そう」という表現ではまったく足りないくらい、これでもか!というくらいの安全対策が講じられていました。
地元だから想像できる未来…「Rapidus」の次世代半導体工場
そもそも北海道における電力需要は、20年前は今後人口が減少するので電力需要は下がるという予想でした。でも、ここ最近は、状況がまったく違います。
というのも、北海道は今絶賛、Rapidusの次世代半導体工場を建設中です。
そうです! Rapidusです。
これが本格稼働するようになれば、確実に膨大な電力が必要となります。Rapidusの世界最先端の半導体工場は、とにかく電力を使います。これは報道ベースですが、現在の計画どおり、フル稼働が実現したら、なんと60万キロワットの電力が必要になるそうです。
加えて、ソフトバンクが苫小牧市に2026年度にもデータセンターを稼働させると発表しています。これも報道ベースですが、このデータセンターに必要とされる最大電力は30万〜100万キロワットだと言われています。北海道電力の冬場の電力需要(ピーク時)は今でも500万キロワットです。これにRapidusとデータセンターを加えると590万キロワットです。
そうすると、電力需給が低下するどころか、電力が足りないという大きな問題に直面します。
こうした世界の最先端技術をもった企業がどんどん北海道に進出してくる背景には、やはり気温の低さがあります。寒さが大きな武器になるのです。加えて、広い土地もあります。足りないのは電力です。
工場や産業の誘致は、政治家の大好きな公約のひとつです。地元の経済効果は絶大です。だから決定した瞬間のあのドヤ顔感は、多くの有権者が目にしていますよね。ここでしかし、私が声を大にして言いたいのは、工場や産業の誘致を公約に掲げるなら、今後はそれとセットの電力確保も、しっかりと計画に盛り込まないと、絵にもならない餅になるということです。
そうしたなかで、Rapidusはできる、データセンターはできる。今後の電力需要はますます高まります。一方で円安で燃料価格が高騰し、火力発電所は二酸化炭素をどんどん出しています。こうした状況から一刻も早く脱却するには、やはり泊原発3号機の再稼働に加えて、1号機、2号機の再稼働も目指すべきです。
