公費だけに頼らない。持続可能な介護業界を実現するために

──国も処遇改善などで予算を投じています。それでも「保険外」という別ルートを作らなければ解決しないのでしょうか。
制度を批判するわけではありませんし、国が介護職員処遇改善加算などで努力してくださっていることにも感謝しています。ただ、それらの加算が現場に届くときには、数十円や数百円の上乗せに留まっているのが現状です。
そもそも、介護保険制度だけでスタッフの待遇をすべて賄うのは財政的に限界に来ています。これ以上保険料や税率を上げて、公費で解決しようとするのは現実的ではありません。制度の変化を待つよりも、民間で処遇を改善する仕組みを作るほうが、スピード感があります。
最近は大手介護事業所も自費サービスに参入していますし、家政士の国家資格化の議論も進んでいます。この領域がプロの仕事として社会に認知されれば、保険外サービスのニーズはより増えていくと思います。
──では、保険内と保険外は、どのように共存していくべきだと思いますか?
保険内と保険外は、お互いの役割を補完し合う対等な関係であるべきだと思っています。
介護保険制度は、誰もが一定の品質でケアを受けられる社会に不可欠なものです。そして、介護職としての専門技術や判断力を磨くための土台でもあります。一方、保険外サービスは、ベテランヘルパーが制度の枠組みだけでは拾い切れない個別性の高いニーズに対応する役割を担います。
この2つが両輪として機能することで、利用者さんにはより多くの選択肢を提示でき、介護職にはスキルを活かす場を広げることができます。お互いを切り離すのではなく、一つの仕組みとして支え合っていくことが、介護業界の持続につながると考えています。
低賃金のイメージを覆す時給5,000円
──藤川さんはSNSなどで「稼げる」という面を強調されていますが、葛藤もありながら、なぜあえてビジネス色の強い言葉を打ち出しているのでしょうか。
ヘルパーさんや事業所の方に、自分たちのスキルには価値があると気づいてほしいからです。
正直なところ、介護はまだ底辺の仕事というイメージを持たれがちです。私自身、「オムツ交換をしているなんて偉いね」と言われ、介護の仕事が恥ずかしいと感じていた時期もありました。でも、私が現場で培った技術は、時給5,000円を稼げるスキルになりました。
「大変で給料が安い」というイメージのままでは、誰も介護業界に入ってきません。だからこそ、SNSではあえて、「時給5,000円の仕事」「稼げるヘルパー」などといった発信を続けています。具体的な稼ぎ方を示すことで、「自分もやってみたい」と思うきっかけを作りたいんです。
──保険内のヘルパーと、時給5,000円のヘルパーでは、どんな違いがあるのでしょうか。
長年の経験で培われた、相手のニーズを察する能力とそれに応える対応力だと思います。例えば、経験豊富なヘルパーなら、相手に合わせて今すべきことを的確に判断し、幅広く対応できます。これは相手が高齢者であっても、あるいは富裕層の男性であっても変わりません。
しかし、今の制度では、新人でもベテランでも報酬は変わりません。私はこの「家政婦のミタ」のようなベテランの技術にこそ、対価がつくべきだと思います。そして、これらのサービスの担い手として、私がとくに期待しているのはミドルシニア層なんです。

