◆人事異動の季節に起きやすい、もう一つの危険
人事異動は環境が変わるだけでなく、人間関係が一度リセットされるタイミングでもある。これまでなら、ちょっとした雑談や空気感で補えていた関係性が、いったん白紙に戻る。その状態で、いきなり「仕事」だけが始まると、人は想像以上に不安定になるのだ。
「チャットで短い言葉だけでやり取りするのは、一見すると効率的ですが、人間は『よく知らない人の短い言葉』を、とても怖く感じる生き物なんです。
例えば、知り合って間もない上司からの『これ、今はどうなってる?』というメッセージ。それだけで『怒っているのではないか』と身構えてしまう部下もいるのです」
本来、人は仲良くなるほど言葉が短くなっていくもので、気の置けない友達同士になると「今日集合」「りょ」で済む場合もある。
しかし今の仕事現場では、その順序が逆転していて、あまり親しくない人とも、最初から短い言葉でのやり取りが始まってしまう。
◆「仕事と関係ない時間」が大切になる
肝になるのは、やはり最初の関係づくりだ。実は今でも有効なのが、歓迎会やランチミーティングといった直接顔を合わせる場だ。
オンライン化や効率化の流れで、こうした場は省略されがちだが、「仕事と関係のない話をする時間」には、想像以上の意味があると大室氏は説明する。
「長縄跳びは、最初に入れば後は飛ぶだけですよね。人事異動も同じです。最初の入りがうまくいかないと、ずっとギクシャクしてしまいます。
反対に、どんな人なのか、何に興味があるのかを知っていれば、その後の短い言葉の受け取り方は大きく変わります」
皮肉なことに、効率化が進むほど、最初の「仕事と関係ない時間」が重要になるのだ。

