それを精緻に検証したのが、雇用ジャーナリスト・海老原嗣生氏の新著『「就職氷河期世代論」のウソ』だ。
このほど、経済動画メディア「ReHacQ(リハック)」の高橋弘樹プロデューサー、元衆議院議員で人材派遣会社に勤務経験もある宮崎謙介氏を招いて、海老原氏との鼎談が行われた。
激論と笑いで盛り上がったトークの、ごく一部をお届けする。

◆600億円が使われた、的はずれな氷河期支援策
今回取り上げるのは、「なぜ氷河期の実像が、政府やマスコミに伝わらないのか」。よく「政府に放置され、見捨てられた氷河期世代」と言われるが、海老原氏は「それはウソ」だという。実は、20年以上前から数千億円が支援策に使われ、つい最近の2020~2023年にも計600億円の3ケ年集中プログラムが打たれた。しかも、その600億円のプログラムは「的外れだ」と海老原氏は批判するのだ。

海老原:氷河期終盤の2003年から10年間で、明確なものだけでも4166億円は支援策に突っ込んでます。周辺施策を入れると5000億円は超えてる。
それが効いたこともあって、氷河期世代の非正規就労の人は、もう大半が正社員になっているんです。詳しいデータは僕の本に書いたけど、政府自身がレポートで「正規雇用比率は40歳前後で、他世代と並ぶ」と書いてるんですよ(内閣府「日本経済2019-2020」)。
それなのに、2020~2023年で600億円つぎこんだ「就職氷河期世代支援プログラム」では、「正規雇用を30万人増やす」とうたってるわけ。意味ないでしょう?
僕は、この施策の審議会の委員で、「もう“氷河期世代”支援はいらない。世代に関係なく、本当に困っている長期就職困難者に税金を使うべきだ」と主張して、ケンカしちゃったんですよ。どう思います、これ?
◆「広く薄く損をした氷河期世代」の痛み
高橋:今のを聞いて思うのは……氷河期世代には、本当に「痛み」はあるんだと思います。ただ、その痛みの根源を「非正規」に設定するのは、ひょとしたら間違っているのかもしれないですね。正社員であっても、収入の問題で家を買えなかったり、いろんな痛みが肌感としてあるんじゃないですかね。海老原:そうなんですよ。私、「氷河期が損してない」とは一切言ってないです。薄く広く、数%ずつ損をしているのは事実です。
東京大学教授の近藤絢子さんの著書『就職氷河期世代』(中公新書)によると、氷河期の2000年大卒は、1984年大卒と比べて、卒業後20年の年収が平均7%落ちていると。例えば、「バブル期なら年収700万円もらえたのが、氷河期のせいで650万円で、どうしてくれるんだ」というのが、彼らの気持ちだと思うんです。
でも政策は、「非正規・無業者を正社員にする」ことに軸足を置いている。もう氷河期世代で「不本意非正規(※)」の人は35万人(2024年、41~50歳)で、同世代人口の2%強しかいないんですよ。「しか」と言うと失礼だけど、支援の現場では「氷河期と限定せずに、広くお金を使ってほしい」という声が挙がっているんです。
(※労働力調査で非正規の理由を「正規の職がないから」と答えた人)

