◆氷河期の悲劇を語り続けるメディアの事情
高橋:メディアはどうなんでしょう? 海老原さんが言っている氷河期の実像が正しいとしたら、なぜ新聞とかはもっと報じないんでしょうかね?海老原:マスコミとかに出ている“有識者”は、本当に雇用のことを知らないんです。労働経済学の学者でもそう。トンチンカンなことを言うから、イラつきますよ。でも新聞は学者の言うことを信じますからね。
何年か前にね、某全国新聞の女性デスクと話したんですよ。「データを見れば、氷河期世代で40代でも非正規の人のうち、90%超は“女性と非大卒”だ。大卒男性より、女性と非大卒のほうが被害者だよね」ということで意気投合したんです。で、一緒にそういう論陣を張ろうとしたら、結局、会社としてはダメだった。
彼女が言うには――大手新聞の人は、有名大学を出た男性が多い。性差・学歴差に光を当てると、自分たちが返り血を浴びる。「氷河期世代=大卒なのに報われない男性」の話にしておくほうが、痛みを感じないんだ、と。それだけが理由かはわかりませんけど。
高橋:ちょっと待って、ジャーナリストがそこまで腐ってるとは、思えないんですよ。僕、けっこう性善説で、記者はちゃんと勉強してるイメージがあって。
◆ある方向に乗ると、路線を変えるのは難しい
宮崎:ただ、マスコミもいったん、ある方向--例えば「氷河期世代は今でも悲惨」という話に乗っちゃうと、路線を変えるのは相当難しいと思います。路線を変える時って、世論がめちゃくちゃ怒ったか、裁判で負けたか、だと思うんですよね。氷河期世代論には、どちらのムーブメントも起きてない。それに、テレビ番組って、あらかじめ方向性を決めてから、それに合う専門家を探しますからね。それに沿ったメモが回って、フリップがもうできていて。
高橋:恥をしのんで言うと、マスコミはやっぱり権威の言うことは信じちゃいますよ。海老原さんが言ってることを、例えば東大教授が言ったら信じるかもしれない。
海老原:中央大学大学院教授やってた時でもダメでした。ほんと、悲しいっすよ。
高橋:やっぱ惜しいわ、海老原さん。たまに出る“非モテの面白芸”みたいな部分を捨てれば、もっと学術的に見られるんじゃないですか?
海老原:もうこの歳で、人格変えられませんて。
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世代に関係なく、本当に困っている非正規の生活保障をどうすればいいか?
また、氷河期世代で、貧困でも非正規でもないけれど、「薄く広く損をした人たち」にどんな対策がありえるか?
同書の中で、海老原氏は具体的な政策提案を書いているが、果たして、政府に届くのかどうか――。
【海老原嗣生(えびはら・つぐお)】
雇用ジャーナリスト。サッチモ代表社員。大正大学表現学部客員教授。1964年東京生まれ。 大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。その後、リクルートワークス研究所にて雑誌「Works」編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社サッチモを立ち上げる。漫画 『エンゼルバンク――ドラゴン桜外伝』の主人公、海老沢康生のモデルでもある。人材・経営誌「HRmics」編集長、リクルートキャリアフェロー(特別研究員)。著書は30冊以上、近著『静かな退職という働き方』が話題沸騰中
<文/日刊SPA!編集部>

