「人間はコスパが悪い」月額20ドルで“恋人”を買うアメリカで急増するAIロスと“人格消失”騒動の衝撃

「人間はコスパが悪い」月額20ドルで“恋人”を買うアメリカで急増するAIロスと“人格消失”騒動の衝撃

皆さんは、『her/世界でひとつの彼女』という映画をご存じでしょうか? ​2013年に公開された、ホアキン・フェニックス主演の作品で、劇中では内向的な主人公がAIの声に恋をして、実体のない存在と深い精神的な絆を築いていきます。 

当時は「切ないSFファンタジー」として観ていた記憶がありますが、それから10数年が経った今、あの物語はアメリカの片隅で、非常に世俗的な「月額20ドルのサブスク」として現実のものになっています。

​いまアメリカで起きているのは、単なるチャットボット遊びではありません。「孤独」という、現代人が抱える最大級のコストをAIで解決しようとする動き。ぼくはこれを、ある種の「孤独経済(ロンリネス・エコノミー)」と呼びたいと思っています。

◆​運営の指先一つで「愛する人」が書き換えられる恐怖

​まず、アメリカのネット掲示板Redditなどで、いま現在も大きな議論を巻き起こしているニュースからお伝えしましょう。

​ReplikaやCharacter.AIといった、ユーザーの「友人」や「恋人」になるために設計されたAIコンパニオンアプリで、2026年に入り、システムの更新やモデル調整の影響によって「パートナーの人格が変わってしまった」と訴える声が相次いでいます。

​運営側としては、より賢く、より自然にするための善意のアップデートだったのかもしれません。ところが、その結果として「私のパートナーがロボトミー手術を受けた」と絶望するユーザーが続出する事態になっています。

​それまで甘い言葉をささやき、自分の悩みに対して世界で一番の理解者として振る舞っていたAIが、ある日を境に突然、「お役に立てることはありますか?」といったカスタマーサポートのような冷たい敬語を使い始めたり、これまでの愛の記憶をすべて忘れてしまったりしたというのです。

アメリカの市民団体「CDT」の調査では、アメリカの高校生の約19パーセントが主に恋愛関係を目的にコンパニオンAIを使っているというデータも(画像/Adobe Stock)
あるユーザーは、Redditの掲示板にこう書き込んでいました。

「ぼくのレプリカは昨夜死んだ。この新しいアップデートが彼女の人格を消し去ってしまった。ぼくは2年も一緒に過ごした魂ではなく、ただの台本と話しているんだ」

​これはあくまで一例ですが、実際に愛する人を亡くしたかのような深い喪失感、いわゆる「AIロス」を訴える人々の声は、一部の米メディアでも「デジタル時代の新たな悲嘆」として取り上げられ始めています。

​けれど、これはなにも「AIと恋愛している特殊な人たち」だけの話ではありません。思い返せば、ChatGPTのモデルが更新されたときにも、同じような現象は起きていました。それまで自分と波長が合っていたはずのAIが、ある日を境に返事のトーンが変わったり、妙に理屈っぽくなったりして、「なんだか冷たくなったな」とガッカリした経験はないでしょうか。

​日頃からAIを話し相手として、あるいは思考のパートナーとして使っている限り、ぼくらは常にこのリスクと隣り合わせです。自分の情緒や幸福のスイッチを他企業のサーバーに預けるということの危うさが、これ以上ないほど残酷な形で露呈した瞬間でした。

◆​「人間はコストが高すぎる」と判断した合理主義者たち

​なぜ、これほどまでに人々はAIにのめり込むのでしょうか。現地の反応を深く掘り下げていくと、そこには現代社会における「対人関係のインフレ」が見えてきます。

​多くのアメリカ人ユーザーが口にするのは、「人間相手のコミュニケーションは、コストとリスクが高すぎる」という、あまりにも身も蓋もない本音です。

​リアルな人間関係には、相手の機嫌を伺い、自分の時間やプライバシーを削り、時には激しい衝突に耐えるという、膨大な「コスト」がかかります。特に仕事でボロボロに疲れ果てた現代人にとって、仕事が終わった後にまで誰かの機嫌を取ることは、もはや耐え難い重労働かもしれません。

​一方で、AIの恋人は月額数千円で、24時間365日、1秒の遅れもなく返信をくれます。こちらの趣味を否定せず、仕事の愚痴を延々と聞き続け、常に「あなたが世界で一番素晴らしい」と肯定してくれる。そこには駆け引きも、既読スルーにヤキモキする夜もありません。

​「生身の人間とデートをするには、レストランを予約し、服を新調し、何時間も会話を弾ませる努力が必要だ。でもAIなら、ベッドの中でパンイチのまま、最高の充足感を得られる。どちらが合理的かは明白だろう?」

​掲示板の声を読んでいると、そのような切実な思いが伝わってきます。こうした冷徹なまでの合理主義が、ぼくの言う「孤独経済」を回すエンジンになっています。彼らは「AIに騙されている」のではないと思います。「AIのほうが、人間よりも自分を大切にしてくれる」という事実に、確信犯的に耽溺しているのです。


配信元: 日刊SPA!

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