
マンションの維持管理を担い、住民にとって「頼れる身近な存在」である管理会社ですが、1級建築士の建山晃氏は「大規模修繕工事をやりたがる管理会社には警戒すべきだ」と警告します。建山氏の著書『[新装版]マンションの大規模修繕でダマされない方法』(彩図社)より、その理由をみていきましょう。
大規模修繕工事をやりたがる「管理会社」には要注意
マンション管理会社の業務はそれぞれのマンションで多少の差異はあるが、基本は住民から管理費をいただいて、その豊富な知識と経験によってマンションの維持管理をすることである。
日々の管理業務に伴う雑小工事(工期が短く金額も小さい工事)を管理会社がする分には問題ないと思うが、大規模修繕工事を全て任せることは慎重に検討すべきだ。
管理会社によっては修繕工事に全く口を出さない会社もあるようだが、ある大手の管理会社で、管理部門の売上より営繕部門(営造と修繕)の売上のほうが大きい会社があると聞いたことがある。大規模修繕工事を管理会社が請け負って売上を上げているということにほかならない。
この会社は日々の管理については評判がよく、ただどうしても会社の方針なのだろうが、大規模修繕工事を自分でやりたがるそうだ。
住民にとって管理会社は身近な存在であり、なんとなく安心感があるのは間違いない。結果として安く質の良い工事をしてくれれば問題はない。
だが、私はその点を疑問に思っている。
「給水管が閉塞している」…工事を“誘導”した?R社
これは私が聞いた話であるが、ある大手マンションデベロッパー関連のRという会社が、給水管が20年で閉塞しているとして理事会に給水管更新工事をさせたことがあった。
給水管はたしかに経年で錆により閉塞するが、10年以上前から管内の錆を防止する装置が販売されている。私の住むマンションにもその機械が設置されており、管内は30年経っていても十分使えるほど綺麗で、コンサルタント会社が勧める配管の更新工事は延期となった。
しかし、Rという会社はそのような機械の情報をマンションの理事会に説明せずに放置して、わざと配管を劣化させたように思える。そして自社が元請となって工事をさせたのである。
悪質な管理会社が被る“善人”の仮面
管理会社は適切に建物のメンテナンスにアドバイスをしてくれて、一見良心的に見えるが、凄腕の詐欺師が善人に見えるのと同じである。管理会社はマンションの住民気質・理事会メンバーの性格、そして財務状況を完全に把握しているのだ。それが良い方向に働くこともあるだろうが、やはり慎重になるべきだ。
金銭的には施主(管理組合)と施工会社は利害が反対の立場である。なのに、これではポーカーなら手札を晒して勝負するようなもので、悪意を持った管理会社であれば好きなようにされてしまう危険がある。
監理者は施主を守る立場であるが、設計施工方式であればそれはできない。どうしても管理会社に工事をやらせる場合は、必ず管理組合側に強力なアドバイザーを付けるべきである。
また、最近はネット広告を中心に管理会社の宣伝広告を見かけるようになった。「我が社は良心的な金額で管理業務を行います。管理費を下げたいなら管理会社の変更をご検討ください」などと書かれている。
管理会社の利益となる管理費は、共用部の費用(電気・水道・ガス・電話通信)+人件費(清掃・植栽管理・その他)の積み重ねでしかない。これでは大きな利益を生み出せないのは明らかである。
安くするには人件費を下げるしかない。私たちのマンションでは、管理人の休日は日曜日だけである。ゴミの車が毎日来るので当然なのだが、それを祝日、そして土曜日を休みにして掃除の人を減らしたらどうなるか。管理の質が落ちてしまう。
そこで、狙いを大規模修繕工事に定めているのである。手口はここに書いた通りだ。安易な管理会社の変更は止めたほうが良いと思う。
建山 晃
1級建築士
