4年ぶりの実家帰省で息子が見た「悲惨な有様」。常連に愛された“心優しき居酒屋主人”の父が、何もわからぬまま〈自己破産〉に至るまで

4年ぶりの実家帰省で息子が見た「悲惨な有様」。常連に愛された“心優しき居酒屋主人”の父が、何もわからぬまま〈自己破産〉に至るまで

「老人が悪だくみの餌食に」――悲しいことに、そんな事件が頻発しています。なかには、認知症の疑いがある人に狙いを定めて近づいてくるケースも。本記事では、永峰英太郎氏の著書『人はこんなことで破産してしまうのか!』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集し、認知症にともなう金銭リスクについて解説します。

温和な性格の居酒屋主人、お金を貸したことを忘れるように

東京都中野区に住む高齢男性は、店舗兼住居に住み、長く居酒屋を運営してきた。彼の温和な性格を慕って、いつも多くの常連さんで賑わっていた。

それだけに、お客さんのツケ払いは日常的で、お金を貸すことも、決して珍しくはなかった。もちろん借りた側は、後日しっかり返済し、トラブルが生じたことは皆無。男性と常連さんの間には、深い信頼関係が構築されていた。

そんな関係性が崩れ始めたのは、2017年頃。知人に言われるまま、お金を渡したり、貸したりする機会が以前より多くなり、それらのお金が返ってこないケースが出てきたのだ。

じつはこの時期、男性には認知症の症状が出始めていた。認知症の「近い体験の全体がすっぽり抜け落ちる」という症状の一つが出て、知人にお金を貸しても、その記憶が抜け落ち、「返して」と言うこともなくなっていた。

知人の多くは、自ら返済していたが、中には「まぁいいか」と、返済しない者も現れ始めたのだった。善人であっても、ちょっとしたことで人は変わっていくのだ。

ハイエナのように近づいてくる悪徳業者

そして、こうした異変は少しずつ周囲に知れ渡っていき、悪だくみをする者が出始める。

中でも多かったのが、男性に対して「あなたにお金を貸した。返してほしい」と嘘を言う者だった。この時期、認知症の症状はまだ初期の段階で、正常な状態に戻ることもあった。そして、自分の記憶が何かおかしいことに対する自覚もあった。

そのため、相手を疑うことなく「私が忘れているんだ」と思い込み、人に迷惑をかけたくない気持ちから、言われるままお金を渡していった。 

この男性の状態が知れ渡ると、悪徳業者も近づいてくる。「認知症の疑いのある人」を集めた名簿を作り、高い値段で売りさばいている業者が存在するが、男性もこのリストに載ってしまう。ちなみに「振り込め詐欺」が行われる裏でも、こうした名簿が出回っているケースが多い。

すると、着物や布団などを扱う業者がセールスにやってきたり、注文していない商品が代金引換で配達されたりするようになった。しかし、男性はどんどんお金を払っていった。

どう見ても堅気とは思えない人が、「金を返さんか!」と怒鳴り込んでくることもあった。男性は、悪だくみをする人の格好の餌食となってしまったのだった。

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