今回は、電車内の理不尽な出来事が、今も忘れられないという2人のエピソードを紹介する。
◆席に座ろうとした瞬間に感じた“強い圧”

外回りが続いていた鈴木さんは、足や腰に疲れが溜まっていた。ムリに座ろうとは思っていなかったものの、「もし席が空いたら座ろうかな」という感覚で、普通席の前に立っていたそうだ。
「数駅進んだところで、目の前に座っていた人が降りる準備をはじめたんです。立ち上がる様子を確認して座ろうと一歩踏み出しました。でも、その瞬間、横からいきなり“強い圧”を感じました」
人ふたり分ほど離れた位置に立っていた男性が、体をねじ込むように割り込み、鈴木さんを押しのけてそのまま席に座ったのだ。
◆スマートフォンの向きで“私が撮られている”と気づいた
あまりに唐突な出来事で、鈴木さんは状況を理解できなかったという。相手からは、舌打ちされ明らかな敵意を向けられていた。
「私のほうが驚いているのに、睨み返されました。そこで、『この人は普通じゃない』と思いましたね」
その直後、男性はスマートフォンをとり出し、鈴木さんの方に向けた。
「画面の向きと距離で、私を撮るんだとすぐにわかりました」
そして、動画撮影を開始する際の操作音が車内にはっきりと響いた。
「無断で撮影されていると思うと、怒りと恐怖が同時に湧いてきました。それ以上に、『この動画が勝手にネットに上げられたらどうしよう』『相手が逆上したら危険かもしれない』という不安が一気に押し寄せてきました」
周囲にはほかの乗客もいたのだが、誰も“こちら”を気に留める様子はない。その状況が、鈴木さんにとっては心細さを強める要因になった。
「何も悪いことをしていない自覚はありました。でも、この場で言い返すと事態が悪化する気がしたんです」
鈴木さんは次の駅で電車を降りた。ホームに立った瞬間、悔しさだけが残っていたそうだ。

