名古屋に登場した豪華絢爛 (けんらん)な美食ホテル
この数年、ラグジュアリーホテルのオープンラッシュが続いている。
ホテルラバーたちが“もう行った?"と口々に語る場所は次々に移り変わり、訪れてみたい場所は尽きない。そんななか、2025年秋にオープンし“規格外の豪華さ"で注目されたジャパンブランドのホテルが、「エスパシオ ナゴヤキャッスル」だ。

名古屋城の堀を挟んで天守閣と向き合う立地に立つホテルは、同じような石垣の上に建ち、まさに“キャッスル”という名にふさわしいたたずまい。このホテル、まるで“現代の城”といいたくなるのは外観だけではない。大切な客人をもてなすための仕掛けはありとあらゆるところにあるのだ。
例えば、スイート宿泊者は名古屋駅まで送迎してくれるのだが、送迎車はマイバッハ。
ホテルに到着して入り口を入れば、尾張の地から天下人となった織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の甲冑 (かっちゅう)が鎮座。その先には狩野派の絵師の襖(ふすま)絵を彷彿 (ほうふつ)とさせる金箔壁画に圧倒される。

宿泊ゲストしか開くことのできない扉の向こうはまばゆいばかりの黄金の世界。ロビー階の4階に到着し、エレベーターの扉が開くと、正面には黄金に輝く見事な松のオブジェが置かれ、その奥に池泉庭園と名古屋城が一幅の絵のように広がる。

客室はわずか100室。名古屋城を望むバルコニー付きの部屋では、ベッドの上からでも浴室からでも天守閣を間近に感じられる。地下2階には天然温泉を備えたスパ施設があり、モロッコランプの影が揺れる幻想的な空間では、エキゾチックな美しさと和の静寂が溶け合う。

けれど、壮麗な空間だけがエスパシオ ナゴヤキャッスルの真価ではない。このホテルの特筆すべき魅力がダイニングだ。
4階のレストランフロアには、8つの飲食店が入る。
ミシュラン三つ星 を誇る京都「祇園 さゝ木」プロデュースの日本料理「日本料理 丈」、朝食が人気の「銀座 稲葉」が手掛ける「尾張 粋 稲葉」、鉄板料理の名門「うかい亭」の新業態「昇龍 by うかい亭」、地元名古屋の予約困難な鮨 (すし)の名店「鮨旬美 西川」。いずれも日本全国からえりすぐった人気店。ここでの食事のために宿泊する、そんなゲストもこれから増えるのではと予感させるラインナップだ。
カンテサンス初の新店が、名古屋に生まれた理由

そのレストラン群のなかで、ひときわ注目を集めているのが、フランス料理「Brillance(ブリアンス)」だ。こちらは、ミシュランガイド東京で19年連続三つ星を獲得し続ける「カンテサンス」のオーナーシェフ・岸田周三氏が、“初めて”手掛けた新店として話題沸騰中。

それもそのはず、これまで数えきれないほどの監修オファーを、岸田氏はすべて断ってきた。「自分の名前を出す以上、本店との乖離 (かいり)があってはならない。やるからには完璧に準備したい」そう常々思っていた岸田氏。彼の高い要望を受け入れられる企業が今までなかったからだ。
「ブリアンス」開業は、ホテルの並々ならぬ覚悟と、奇跡のようなタイミングがあったからこそ実現したのだ。
まず、今回の話があったときに、岸田氏は、“開業時スタッフ全員の教育と準備期間をきちんととること”をリクエストした。多くの企業がそこまで時間とコストをかけられないと断念するなか、エスパシオ ナゴヤキャッスルの答えは違った。「私たちも完璧な店をつくりたい」と、快諾。開業準備期間中に関わる料理人そしてサービススタッフを全員「カンテサンス」に送り、1年間しっかり“岸田イズム”をたたき込んだ。

もうひとつの決め手が、「ブリアンス」シェフの髙瀬奨太氏の存在だ。「髙瀬さんがいなかったら、この契約はありません」と岸田氏は断言する。
髙瀬氏はカンテサンスで4年間研鑽 (けんさん)を積み、渡仏してパリのミシュラン二つ星「ブラン」でも修業を重ねた30歳。岸田氏が自身の店で20年かけて培った、高品質の料理でゲストを楽しませる“仕組み”を託せる人物がいたことが大きかった。
