本店の哲学を受け継ぎ、進化を目指す
「ブリアンス」で髙瀬氏がなにより大切にしているのは、カンテサンスで叩き込まれた「プロデュイ(素材)」「キュイソン(火入れ)」「アセゾン(味付け)」 という3つのエッセンス。
この3つをきちんと考えれば、皿は自然に美しく輝くということは、髙瀬氏がカンテサンスで学んだ核心であり、ブリアンスでも揺るぎない軸となっている。

現在のメニューは、カンテサンスで磨き上げてきた料理10皿からなるコース1本のみ。なかには、ドラマ『グランメゾン東京』でおなじみの料理も登場する。「お客さまに喜んでもらうことを一番に考えて、これがベストだと思っています」と、岸田氏は語る。

「カンテサンス」に通っている人ならば、 “オールスターメニュー”のような内容にウキウキするだろうし、初めて体験する人には、スペシャリテ「山羊のミルクのバヴァロワ」をはじめ、名刺がわりの料理の数々に心躍るだろう。

岸田氏の味をしっかりと受け継ぐ髙瀬氏の料理は、一皿ごとの味わいのコントラストも温度も緻密に考え抜かれ、提供される。唯一本店と違うのは、魚のメインディッシュがないこと。その代わり、アツアツの「オマールエビと帆立のタンバル」が必ずコースに組み込まれる。オーブンから出たばかりの皿がテーブルに運ばれてきたときに漂う香ばしい香りに、思わず歓声があがる料理だ。

岸田氏は名古屋という土地でやるからには、徐々に地元の生産者のものも取り入れていきたいと話す。しかし、地産のものがあったとしても、目指す料理にフィットしなければ使わない。
例えばメインの「バヴェットのロースト 赤ワインと黒胡椒のソース」には、そんな岸田氏の信念が垣間見える。岸田氏はこの料理に松阪牛も地元の肉も試した末、あえて別の交雑牛を選んだ。というのも、これは低温調理が主流となり「肉本来の香ばしいおいしさが失われつつある」ことへのアンチテーゼから生まれた料理。この料理に脂がのった柔らかい松阪牛では持ち味が出ないのだ。

だからこそ、ガッシリとしたかみごたえのある交雑牛のハラミを赤ワインやスパイス、バルサミコに1週間以上漬け込み、高温でガリッと焼き上げる。本場フランスにもない、岸田氏ならではの料理だろう。
デセールは、カンテサンスで4年間腕を振るったシェフパティシエの松本健史氏が担う。コースの最後を飾る、あの「メレンゲのアイスクリーム」ももちろん登場。焼きたてのメレンゲを砕いて仕上げるなめらかなアイスクリームは、カンテサンスでも顧客からの要望が絶えない名物だ。

ブリアンスは、まだ輝き始めたばかり
店名「ブリアンス」(フランス語で「輝き」)という名前は岸田氏が考案した。この店は修業先の「アストランス」、自身の「カンテサンス」に続く系譜なのだ。
ここには、「『ブリアンス』は『カンテサンス』のコピー店ではない」という岸田氏の思いも込められている。髙瀬氏も「お客様に喜んでもらえるように、ブリアンスチームで“カンテサンスよりうまいものを出そうぜ”と盛り上がっていますよ」と胸を張る。

19年ミシュラン三つ星を獲得し続けている品川の「カンテサンス」は予約も取りにくく、中部・関西圏から足を運ぶのは躊躇 (ちゅうちょ)していた人も多いはず。「ブリアンス」なら、まだ予約も取りやすいのでこのハードルはぐっと下がるのも嬉しいところだろう。
「少しずつ時間を重ねていくなかで、髙瀬シェフが見つけた表現も自然とコースに加わっていく」と岸田氏。「カンテサンス」という揺るぎない1本の木から、やがて名古屋のテロワールから生まれる新たな一枝が伸び、「ブリアンス」という花が開いていく──そんな進化も楽しみになる一軒だ。
text: Misa Yamaji
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