
ドラマでよく見る、ピーッと音がして心電図モニターの波形が一直線になり、脈拍が0になるシーン。実際に人が亡くなる現場において、ドラマのような状況は一例に過ぎません。本記事では、高島亜沙美氏著・西智弘氏監修『人生の終わり方を考えよう 現役看護師が伝える老いと死のプロセス』(KADOKAWA)より、「人が亡くなったあと」のリアルに迫ります。
人の死を法的に証明する「3つの兆候」
病院で亡くなる人のほとんどに、心電図モニターがついているので、それが0になったら医師を呼びます。たまに、まったくノーマークだった人を呼吸停止状態で発見することもありますが、そういうときも必ず心電図モニターをつけます。
人の目と機械、両方で確認するのがスタンダード。人が亡くなっていることを証明するには、
●呼吸停止
●心停止
●瞳孔散大(対光反射の消失)
これら死の3つの兆候を医師が確認し、診断する必要があります。この3つが揃ってはじめて、その人が法律的に亡くなったという扱いになります。
ドラマだとご臨終ですという前に、いろいろ確認しているシーンが流れたりしますが、アレですね。ライトで眼球を照らして対光反射がないことを確認し、聴診器で心音、呼吸音が聞こえないことを確認しているんです。
ちなみに、脳死の場合はこれら3つが揃いませんので、法的に亡くなった扱いになりません。みなさんのイメージも、脳は死んでいるけど心臓や身体は生きている、と解釈される方がほとんどなんじゃないでしょうか。ほんと、いのちの扱いって難しいです。
「全身挫滅」の凄惨…3つの兆候を確認できないケースも
ここから、かなり酷い話になります、ご容赦ください。事故や災害でご遺体の損傷が激しく、この3つを確認できないという事例もあります。
直近の話だと、2024年の正月に起きた羽田空港での日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突した事故。海保機に乗っていた方のうち3名の死因が全身挫滅と報道されていました。おそらく、身体のあらゆる組織が肉眼的に識別困難なほどダメージを受けており、この状態での生存はあり得ないという解釈から死亡という判断に至ったのだと推察します。
死亡診断書に必ず書かれる「死因」
死亡診断書――医師が書くその人が亡くなったことを証明する書類ですが――これには必ず診断名を書かなくてはなりません。大腸がんとか老衰とか、その人を死に至らしめた理由を記載するんです。
日本では少数だと思われますが、刺殺や焼死など事件性を有するような可能性がある場合には、検死をしなくてはなりません。この人が亡くなったことに、事件性があるのかないのかを医師が証明しなくてはならないんですね。
コロナ禍に自宅で倒れひとりで亡くなっていた事例も、例外なく検死を受けているはずです。もしかしたら、誰かに毒を盛られたかもしれないですし、一酸化炭素中毒による自殺かもしれないですからね。だから、死亡診断書と死体検案書は共通の用紙になっており、どちらかを二重線で消して提出するという運用になっています。
ちなみに、病棟では死体検案書の箇所を二重線で消すしかありえません。全身挫滅なんて診断名、おそらくそれを診断した医師も、生涯ただ一度しか使わないような死因だと思われます。
死の3つの兆候を確認することもできなければ、検死も解剖もできない状態のご遺体なんて、そうありませんからね。
