◆時代の変化とともに変わった“世の中の恋愛観”

にくまん子:“見た目イジリ”に対するマインドは大きく変わりましたね。ルックスでジャッジされることが減ってきているのかもしれませんが、女性側が「こういう自分を気に入っている」っていうのが見えてきたように思います。
もちろん外見コンプレックスがゼロになることはないと思いますが、漫画の中で男性が「おいブス」とか平気で言ってくる描写そのものが、もう古い感覚なのかなと感じていますね。
――いま、世の中の恋愛観も大きく変わってきているように感じます。
にくまん子:そこはこっちもちゃんとアップデートしないとですよね。私の時代の「出会い」といえば合コンだったんですけど、今その言葉って生きてます?(笑) 『恋のカスと愛のクズ』のしずみも知り合う男がマチアプに限られているんですが、現代の出会いは、まずは非接触な状態。そこから徐々に体温を感じる相手になっていくのかもしれません。
◆「トイレットペーパーが切れた」日常の微々たる変化を形に

にくまん子:恋愛に限らず、人間の生活って、ドカンとくる衝撃的な出来事そのものより、そこに至るまでのしょうもないことの積み重ねが大事だと思うんです。
たとえば「トイレットペーパーが切れた」「コーヒーのシミが落ちない」といった、本当に微々たる変化の連続が、社会をかたちづくっているんじゃないかな、と。だから本人すら取りこぼしてしまうような言動を、セリフや表情として作品に刻んでいきたいですね。
――そうした繊細な描写が、多くの読者の共感に繋がっているのでしょうね。
にくまん子:今の時代って、個人の物語が露出しやすくなりましたよね。受け止めきれない感情を何かの形にして伝えたい、知ってほしい、という思いを、現代人はもう胸の内だけには留めておけなくなっているんだと思います。
でも私の場合、それを言葉としてそのまま発信してしまうと、どこかで終わってしまう気がしていて。自分の目標や夢も含めて、あえて自分の中に留めておくことも一つの美徳かなと考えています。だからこそ、伝えたい“言霊”は、言葉だけでなく絵や漫画として形にしていきたいです。
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後編では、現在マンガSPA!で連載中の『恋のカスと愛のクズ』の創作秘話を中心に、「なぜ人は、わかっていながら“カス”や“クズ”に惹かれ、同じ恋の沼に沈み続けてしまうのか」という、現代恋愛の本質に迫る問いについても語ってもらった。
【プロフィール】
にくまん子
漫画家。日常のふとした瞬間に垣間見える人間模様や、愛憎入り混じる人間たちの機微を掬い取り、鮮烈に描き出す。2019年に刊行された、愛しきダメ女たちのやっかいな恋と人生の物語を描いた短編集『泥の女通信』(太田出版/「完全版」は2024年にWECOMIXから)で注目を集める。その後、『恋煮込み愛つゆだく大盛り』や『涙煮込み愛辛さマシマシ』、『いつも憂き世にこめのめし』(いずれもKADOKAWA)などを発表。中毒性の高い作品で熱狂的な支持を集めている。現在は「マンガSPA!」にて『恋のクズと愛のカス』(扶桑社)を連載中。
(写真/星 亘 取材・文/もちづき千代子)

