大川原の大熊町交流ゾーンにあるコミュニティキッチン090(オークマ)を切り盛りしながら、大熊産の酒米やイチゴ、甘酒をふんだんに取り入れたお菓子作りに情熱を注いでいる吉田幸恵さん。家族のアレルギー経験から生まれた「誰もが安心して食べられるお菓子」へのこだわりや、周囲のサポートを得ながら進める「大熊の新たなお土産」への挑戦、そして再びこの地で暮らす喜びについて、詳しく伺いました。

地元の力になりたいという一心で開店
私は大熊町の出身で、現在は、コミュニティキッチン090(オークマ)の店長として、ハンバーガーやラーメンなどの飲食提供を切り盛りする傍ら、090(オークマ)菓子店として、お菓子の製造・販売を行なっています。
震災前は運送業のドライバーとして働いていました。震災後は会津若松市に避難し、町の社会福祉協議会に勤め、生活支援相談員として避難生活を送る町民の方々への訪問活動を行っていました。2019年に楢葉町に移り住んでからは持病の影響でなかなか仕事が続きませんでしたが、それでも、「やはり地元のために何かできることはないか」という思いは消えませんでした。
転機となったのは、大野駅前にあった「KUMA・PRE(クマプレ)」での勤務でした。そこで現在のコミュニティキッチンのオーナーと出会い、「パン屋さんをやってくれないか」と声をかけていただきました。私は昔から、食べたいものがあれば自分で作るという環境で育ち、趣味でお菓子やパンを焼いていました。特に子供が生まれてからは、家族に喜んでもらえるのが嬉しくて、本格的にお菓子作りやパン作りに取り組むようになっていたのですが、当時飲食業の勤務経験があったわけでもなく、「私にできるのだろうか?」と思いました。しかし、地元のためになるならと、店長を引き受ける決意をしました。
お店をオープンした当初は、どう受け入れてもらえるのか不安でしたが、周りの方から「開けてくれてありがとう」と声をかけていただき、今では町民の皆さんが気軽に集える場所として、幅広くご利用いただいています。

「大熊産」にこだわった、体に優しいお菓子作り
現在はコミュニティキッチン2割、お菓子作り8割という形で携わっているのですが、私がお菓子作りをする上で特にこだわっているのが、大熊町の素材を活かすことです。せっかく地元にいるのだから、地元のものを使って何か作りたいと、これまで様々な商品を生み出してきました。
中でも、看板商品の一つである、クッキーは、大熊町で収穫された酒米「五百万石」を製粉した酒米粉を使用しています。元々は、まちづくり公社から「日本酒の帰忘郷を作るのに使っている酒米
を使ってお土産を作ってほしい」という依頼を受け、クッキー作りが始まったのですが、酒造りに適したお米をあえてお菓子に使うのは全国的にも珍しく、納得のいく食感に仕上げるまでには試行錯誤を繰り返しました。小麦のクッキーとは異なる、酒米粉ならではのもちっと、ざくっとした食感が特徴で、体に優しいところが人気のポイントです。

また、人気商品の一つであるプリンは、帰忘郷の甘酒をベースに使っています。最近では、きなこを使ったプリンも販売を始め、徐々に人気を集めています。その他にも大熊町の名産品の一つでもあるキウイや、町内の「ネクサスファームおおくま」のイチゴなど、地元の農産物や加工品を積極的に取り入れることで、「大熊ならではの味」を形にしていきたいと考えています。クッキーは、大川原のニューヤマザキデイリーストアの店頭のほか、おおくままちづくり公社のオンラインショップでもご購入いただけます。ぜひ一度ご覧いただけますと幸いです。

私のお菓子作りの根底にあるのは「家族への想い」です。私の夫は小麦アレルギー持ちで、息子もナッツアレルギーを持っています。そのため、家族が安心して食べられるようにと、グルテンフリーで、アレルギー物質と添加物を極力排除したレシピを追求してきました。その想いが少しずつお客様にも伝わっているのか、「美味しかったからまた買いに来たよ」と足を運んでくださるリピーターの方や、遠方から来られたお客様が「珍しいからお土産に」と手に取ってくださることもあり、大きなやりがいを感じています。
私の次なる目標は、胸を張って「大熊のお土産といえばこれ」と言っていただけるような商品を確立することです。ゆくゆくは、道の駅に並ぶような“大熊ならでは”のお土産を生み出したいと考えています。将来的には町内に専用の工房を構え、アレルギーのある方もない方も、子どもからご高齢の方まで、みんなが笑顔になれるお菓子を届けていきたいと思っています。


