◆どうも記憶が曖昧。脳みそが溶けていた?
胃が荒れない飲み物であるストロング系を、濃い味の弁当と共に流し込む。そして一服をキメる。これが1日の締め方であり、楽しみだった。どれだけ、仕事で疲れてもこの1日の締めさえあればやっていける。多分、ストロング系を1缶飲むたびに脳がトロトロと溶けていった気がする……。いや、もしかすると、本当に溶けたのかもしれない。というのも、この頃の記憶は非常に曖昧なのだ。
よく「子どもの吸収能力は乾いたスポンジのようだ」というが、筆者の場合はすでにストロング系でビチョビチョのスポンジに、さらにストロング系をぶちまけて、吸収力という名のスポンジを酒浸しにしてしまった。
そんな飲み方をするくらいであれば、編集者なのだから、居酒屋やバーに行ってそこでお酒を嗜みながら交友関係を広げていくべきだろう。しかし、20代前半の筆者は毎日、居酒屋で晩酌できるほど金はない。同業者が集まるゴールデン街のバーなどもってのほかで、法外な値段に感じた。
それに、普段は家でひとりで飲んでいるため、飲み会などで居酒屋に行ったとしても、その帰り道に「1日の締め」のため、改めてストロング缶を買うのだから意味がない。
きちんと、158gにするために、例のシーサーのアプリに飲み会で飲酒した量を打ち込み、何缶まで飲めるのかを確かめていたのだ。ただ、飲み会が終わった時点で、アプリのシーサーはとっくに倒れている
だったら、せめて自炊でもすればいいのだが、母親が料理上手だったため、それと比べると自分の作る料理はなにを作ってもマズい。自己嫌悪に陥り、冷蔵庫にはチューブのわさびや梅肉しか入ってないほどだ。ちなみに、アルコールは常備すると際限なく飲んでしまうため、毎晩購入していた。
一度、母親が作ったことのないメニューを作ろうと思い、にぼしをミキサーで削り、豚骨を砕いて本格的にラーメンを作ったが、苦労とかかった金額の割に3食分くらいしかスープができなかったため、心の中でなにかが折れてしまい、『ガチンコ』(TBS系)の「ガチンコラーメン道」の佐野実のごとく、スープも麺もすべてシンクに流して捨てた。アルコール依存症のくせに妙に繊細なのだ。
◆「裁量労働制」に歓喜しつつ、ビデボに泊まる夜も
仕事の苦痛から逃れるために、酒を飲んでいたわけだが、4年も経つと、ようやく記事の作り方のコツを掴み、それなりに「使える」編集者になったため、自分を卑下することはなくなったが、その分、仕事量が増えた。ただ、それが「期待されている」という気持ちに変わり、ますます仕事に生き甲斐を感じて、グビグビと酒も飲んだ。
しかし、世界が大きく変わる出来事が発生する。新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大だ。
筆者のいた月刊誌も本来は東京五輪があることから、2020年は夏に1号休みになるという話だったのだが、緊急事態宣言が発令されて以降、流通網が機能しなくなったため、なんだかんだで2カ月に1回の発行になってしまった。隔月誌である。さすがに、それを聞いた日はショックでストロング系をもう1本追加で飲んだ。翌日は吐いた。
そして、刊行ペースも変われば、働き方も変わる。出社をできるだけ避けるようにして、テレワークということで家で仕事をすることになった。
だからといって、別に昼間から飲むようなことはなかったが、VPNなどで出社時間が管理されていなかったため、どれだけ夜遅くに飲酒しても、早起きする必要はなくなり、自分のペースで作業できるようになった。
「便利な時代になったぞ! 自分のペース配分で働き放題だ」
それにしても、若手社員の出社時間の30分前に出社してゴミ捨てをする、会議での板書、飲み会の幹事、電話応対、大きな声での挨拶といった文化が「人事評価」の軸にならなくなったのは革新的だったと思う。
そんな中、筆者は出社時間を気にすることなく、深酒をしてもゆっくりと起きられるようになったため、かなりストレスは緩和された。
ただ、その分本当に朝起きられなくなったため、月1回の10時30分から行われるオンラインの全体会議の前日は、家の近くのビデオボックスに泊まるようにした。店員にモーニングコールしてもらい、ふらつきながら家に帰って何事もなかったかのように会議に参加していた。
当然、そのビデオボックスには筆者が飲み干したストロング系の缶が5本も置いてあったため、清掃に入った店員は引いてしまっただろう。「こうはなりたくない」と思っていた漫画喫茶の大人に筆者もなりかけていたのだ。
編集者は裁量労働制ということもあり、昼から仕事を始めても成果物さえ出せばいいという理由で、深夜にストロング系を飲みながら、せっせと事務仕事をこなした。原稿もやはり大学生の頃感じたように、酒を飲みながらのほうが上手に書ける気がした。
そのため、ストロング系を5本飲み切って倒れるまで、原稿を書いていたところ、それはそれで集中していることから、目が冴えてしまい、朝の4〜5時まで仕事に熱中していた。
本来であれば翌日送るためのメールも下書きを書いて、翌日問題ないか精査して送ろうと思ったが、さすがに3時を回るともう泥酔状態でビジネスメールを書くと、もう文面がグチャグチャになってしまうため、それはやめた。

