◆無料のカットモデルでヘアカット、食費は月5000円
――家賃が安いとはいえ、その収入では物価高の日本では生活できなくないですか?野本 生活は意外と大丈夫。髪はカットモデルの案件を探して無料で切ってもらい、衣類は古着でやりくりしてます。しんどいのは社会保険料と国民年金。低収入なので税金はほぼ取られないですが、国民年金は最低でも1万7150円。家賃とほぼ同額ですね。
夏木 僕はまだ芸歴1年目なので飲み会やご飯は先輩に奢ってもらったりしてとにかく節約生活ですね。原付で交通費を浮かせて、ネタ合わせはビルの屋上や公園を使ってお金を切り詰めてます。都内の無料で居座れるスペースはもう大体知ってます。ただ、恥ずかしながら今は家賃を滞納しちゃってて……。
青山 私は別に困ってないです。奨学金の返済と食費に月1万5000円ずつ、家賃や共益費で月3万円でおよそ月6万円の出費ですが、通信費は楽天モバイルの3ギガプランなら月1000円ですし、娯楽は図書館でマンガを読んだりすればタダなのでサブスクにも入っていません。ちょっと前まで食費は月5000円に収めていましたし。ただ最近はコメの値上がりがきついかな。
夏木 青山さんの食費月5000円時代は本当にすごかった。一度作ったカレーを1週間くらい食べたり、申し訳程度しか肉の入っていない豚汁を作ったり。真似はできないから参考にはならなかったけど、適応できたもん勝ちだと思ったね。
野本 気付かされるものがありましたね。ほんの少しの豚肉でも肉の味ってちゃんと出るんだ、とか。食に限らずですが、一度ここでの生活に慣れてしまうと、人間ってお金をかけなくても生きていけるんだって分かっちゃうんですよね。
夏木 臨時の出費はやっぱ痛いけど、こだわりあるところにはお金を出しちゃうんです。一度原付を盗まれて運良く戻ってきたんですが、エンジンが盗まれていて、そのリカバリで7万円飛びました。中古を買いなおしたほうが安いんですが、思い入れがあったんで。
野本 安いネカフェで2000円のモバイルバッテリーが3回盗まれたのは地味にキツいです。治安が悪いからやはりそうなる。
青山 自分は貯金する気がないので……出費が痛いって感覚はないかな。この間もリフレッシュのために、残高にあったお金を使って沖縄旅行に行きましたよ。
野本&夏木 うらやましい!
◆将来は不安だけど、無理して稼ごうとも思わない

野本 健康面が少し不安ですね。アレルギーや喘息があって、医療費がかかることもあります。特に国保が高いのがきつい。年金も1万7000円固定だし、それが一番重い。
青山 だから自分は、年金免除を使っている時期もありましたね。昔から、先のことはあまり考えないタイプ。今の生活が続けられればそれでいいかな。マンガで売れたい気持ちは少しはあるけど、自分を壊さないことが最優先です。高額の案件が来ても、どうせ作業量が多いだろうし。1P10万円とかの仕事ならさすがに考えますが、基本的に仕事を増やしたくないです。
夏木 僕はやっぱり芸人として食えるようになりたい。ただ、良くも悪くもここでの生活に慣れたおかげで焦りが減りましたね。収入ってなくても何とかなるなって。闇バイトで同世代が捕まってるニュースを見ると、リスクを侵してまで稼ごうとなんてしなくても生きていけるのになと思ってしまう。
野本 僕にはマンガや芸人のような軸がないので、せっかく東京に来たからには何かしたい気持ちはあります。まずは収入の幅を広げたいので、せどりを始めてみようかなと思います。
過度な欲を抱かず、最低限の衣食住さえあればそれでいいーー時代は、そんな生き方を豊かさの一つと見るか、貧しさと見るのか……。
取材・文/茂木響平 取材協力/グランドレーベン東武練馬
【茂木響平】
97年生のライター、イベンター。大学在学中に活動を初め、大学ネタ、就活ネタを中心に週刊誌などで執筆。新宿のBAR&イベントスペース「ミズサー」のオーナーでもある。Twitter:@mogilongsleeper

