年金額が決まる仕組み
Aさんの年金額が期待していたよりも少なかった理由には、年金制度の構造があります。日本の公的年金制度はよく建物にたとえて「2階建て」と表現されますが、職業によって加入できる年金制度が異なります。
1階部分:国民年金(基礎年金)
20歳から60歳までのすべての国民が加入する土台部分です。原則として65歳から受給できる老齢給付のほか、障害給付と遺族給付があります。老後にもらえる国民年金からの支給額は満額で年約84.7万円(月7万608円、2026年度)。免除や猶予制度もありますが、保険料は定額です。収入額にかかわらず同じ額を納めます。
2階部分:厚生年金
会社員や公務員が加入する上乗せ部分です。保険料は給与(標準報酬月額)に比例し、年金額も納めた保険料額に応じて増えます。国民年金と同様に障害給付と遺族給付、老齢給付があり、それぞれの年金からの給付を上乗せします。
Aさんは国民年金に37年間加入していた一方、会社員として厚生年金に加入していたのは、約20年間でした。個人事業主として独立してからは、国民年金のみの加入に切り替わっています。国民年金の保険料はきちんと納めていましたが、厚生年金のような「報酬に比例する上乗せ部分」はありません。つまり、独立後は1階部分(国民年金)だけになり、年収に応じた保険料の積み増しは止まってしまったのです。
年金額を左右する「3つの要素」
年金額は、以下の3つの要素で決まります。
1.加入期間:老後に年金を受け取るには、原則として10年以上の加入期間(受給資格期間)が必要。さらに、加入期間が長いほど年金額は増えます。なお、基礎年金は40年(480ヵ月)加入で満額になります。
2.加入区分:国民年金だけか、厚生年金もあるかで、受取額は大きく変わります。厚生年金に加入していれば、国民年金にも拠出金が拠出されるため、基礎年金に報酬比例部分が上乗せされ、年金額は手厚くなります。反対に、国民年金だけの期間が長いと、将来の年金額は基礎年金の範囲内にとどまりやすいです。
3.保険料の水準:厚生年金の場合、保険料は給与に比例するため、高い給与で長く働けば、それだけ年金額も増やすことができます。ただし、保険料に反映される給与額には上限がある点に注意が必要です。R8年現時点での上限は、月々の給与を反映する「標準報酬月額」は65万円。賞与やインセンティブの金額を反映する「標準賞与額」は150万円です。なお、国民年金の保険料は定額保険料で、収入が多くても年金額は変わりません。
