エンゼルケアは医療保険適用外…5万円~10万円の費用がかかる
ここまでのケアをエンゼルケアと言います。日本語だと死後処置になりますが、死後処置という言葉を仕事で使ったことはありません。響き的にもエンゼルのほうが、患者さんを天国へ委ねられるような気がして、個人的には好きです。
この一連のケア、かなりドライに聞こえるでしょうが、保険適用の医療行為ではありません。保険適用となる医療行為は、あくまでも生きている人間に施すもので、亡くなってしまったご遺体に施すケアは算定外となるんです。そのため、エンゼルケアは自由診療枠のような扱いになっています。
医療機関によって価格はさまざまで、いまわたしが勤めている病院は5万円くらい、前に勤めていた大学病院では10万円くらいのコスト算定でした。
ご遺族も、亡くなったすぐあとに会計するのは稀で、葬儀などが落ち着いてから再び病院に来て支払いをすることがほとんどです。この段階で、なんか今回の医療費、高くない?と思っても、死後処置の欄を見て納得されている方が多いように思います。あれは自費なのねって。
エンゼルケア、高くない? なんていうとバチが当たりそうな国民性も相まって、ここでクレームが入るような事例にわたしは出会ったことがありません。ここから先は、もう少し専門的な話をしていきますね。
棺には入れ歯を入れられない…できるだけ顔を整える現場の工夫
多くの高齢患者さんがそうですが、生前のときのお顔と大きく変わってしまうんですね。その要因のひとつが、入れ歯の有無。原則、火葬時には貴金属を棺の中に入れてはいけません。そのため、入れ歯は入れないのがデフォルトとなります。ただ、そうすると口周りの様子が大変寂しくなります。頰がこけたような印象になるんです。そのため、ガーゼや綿球を口の中にうまく入れ込み、入れ歯が入っているようにみせることがあります。もちろん、限界はあるんですが。
それから、口が開いてしまう現象。筋肉の弛緩と硬直によるもので、骨格的にしかたのない部分でもあるのですが、どうしても口が開いてしまいます。
ただ、ご遺族としても本人の尊厳を守る意味でも、できるだけ口を閉じてあげたい。そのほうが、キリッとした印象になりますし、あたかも眠っているように見えるからです。そのため、顎の下にフェイスタオルを丸めてクッと固定しておくことがあります。
そのまま葬儀会社に引き渡すことも。一応、顎が開かないように、顎バンドなる商品も出ているんですが、わたしはあまり好みではありません。
亡くなった方の顔周りを白いひらひらレースが1周しているって、生前のイメージと合っていたらいいですけど、合ってなかったらなんだこれ?ってなります。それに、むくんでいるご遺体だとバンドを外したときに跡が残ってしまって、これまたなんだこれ?ってなるんですね。ご遺族の希望があれば使いますが、バンドをつけた姿をみたご遺族は「やっぱりそれ、使わなくていいです」とおっしゃることがほとんどです。
合掌バンドも然り。これは各々の倫理観によりますが、亡くなった人の身体を縛るということに抵抗を感じる人が多いからだと思います。それなら、合掌させずに自然な体勢でいいです、というご遺族も多いです。
