だが、彼女が描くのは下世話でも奇抜でもない。現代を生きる男女の、痛いほどリアルな恋愛模様である。過去作『泥の女通信』は、シンガーソングライター・あいみょんが絶賛したことでも話題になった。

「なぜ人は、わかっていながら“カス”や“クズ”に惹かれ、同じ恋の沼に沈み続けてしまうのか……」。今回は、その制作秘話をうかがった。
◆「むっちりもっちり」悶子と、対照的なしずみの誕生
──メインキャラクターの「沼々煮しずみ」と「悶子」は、どのようにして生まれたのでしょうか。にくまん子:見た目でいうと、悶子は完全に私の好みです(笑)。肉感のある、むっちりもっちりした女の子。正統派のモテ路線ではないけれど、常に需要があるタイプを描きたかったんです。愛嬌があって、なぜかそばにいてほしくなる。私自身も、そんな存在になりたいという憧れが込められています。
一方のしずみは、その対極で細身かつ少し陰のあるキャラクターになりました。実は彼女のキャラデザインは二転三転したんですよ。最終的に「サッパリした見た目の女の子のほうが、恋に悩んだり迷ったりしそうだな」と思い、さまざまな要素を混ぜ込みました。

にくまん子:キャラクターの内面は、自分と切り離せない部分があるのは確かです。でも私は、作者と作品は別物として読んでほしいという思いが強く、意識的に自己投影は避けました。
それでも、自分の感情や経験が作品の素になるのも事実で。悶子のような性への好奇心や、しずみのような「うまくいかなさ」は、私自身に由来しているかもしれません。そこへ周囲のさまざまな人の要素をミックスした結果、この二人は読者さんから「誰々に似ている」と言われるキャラクターとして生まれたのだと思います。

◆「読んでいると、まるで飲み会に参加しているような感覚に」
──作品を作るにあたり、発想はどのようなところから得たのでしょうか。にくまん子:5年前に同人誌として “プロト版” を販売していました。3~4人の女の子が宅飲みをしながら、うまくいかない恋愛や不安定な人生について語り合う――そんな内容です。今回の新連載では、そこに「読んでいると飲み会に参加しているような感覚になる作品」というアイデアを加え、登場キャラクターも絞り込みました。
──2021年に頒布した同人誌『もしかして たぶん そうかもね きっと』ですね。
にくまん子:そうです。ただ、今回の連載ではシチュエーションを宅飲みに限定していません。居酒屋での飲み会だったり、街を歩いていたり、デートの帰り道だったりと、舞台はさまざまです。人生の悩みどころで“一人反省会”をしながら、何かの気づきを得るようなイメージですね。

