出社中にストロング缶3本、勤務中にも3本…「γ-GT 2410」で“死ぬレベル”と言われた20代編集者の末路

出社中にストロング缶3本、勤務中にも3本…「γ-GT 2410」で“死ぬレベル”と言われた20代編集者の末路

「酒……。酒を体に入れないと!」

コンビニに駆け込み、「ストロング系」と呼ばれる缶チューハイを買い、そのまま胃に流し込む。ようやく吐き気も震えも止まる。完全にアルコール依存症の状態だ。それを1日に何度も繰り返す。

いくら飲んでも酔いつぶれることができなくなった。しかし、体は確実に蝕まれていくーー。

本連載では、20代でアルコール依存症になった、ひとりの編集者の転落と回復の日々を追う。

 千駄木雄大
ストロング系に出会う前の筆者

◆一応、夢を叶えた。酒浸りだけど…

サブカルチャーにのめり込む以前の幼少期の筆者は、お笑い芸人に憧れていた。それは、面白いというだけではなく、自身のコンプレックスを笑いに変えていくのが好きだったのだ。当然、そこには卑屈さはあるが、それを飲み込んで笑いに昇華していた。

「芸人さんみたいな人間になりたい」

ただ、さすがにその世界で成功するのは難しいとはわかっていた。その一方でお笑い番組は好きだったため、時差のあるアメリカにいるにもかかわらず、朝方に起き上がって『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)を生放送で見たりしていた。

そのうち、リアルタイムで見られる番組として朝(米国東部標準時)に放送されていた『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)を知った。同番組には旬の芸人だけではなく、編集者やライター、イラストレーターもよく出ていた。

「みうらじゅんや渡辺祐って誰だ?」

その後、偶然見つけた雑誌「宝島」(宝島社)の「VOW」の本編単行本で彼らの存在を知るわけだが、この頃は「バラエティ番組にも文化人枠があるのか」という思いを抱きながら、なんとなく「ライターや編集者としてテレビに出るのもありだな」と考えていた。

そして、大人になって東京で出版社の編集者になれたため、大好きなお笑い芸人にもたくさん取材できたし、コメンテーターとしてインターネット番組だが、テレビ局に収録で行くこともできた。子どもの頃に夢見ていたことはだいたい実現できた。酒浸りのため、毎日脳が麻痺しているということを除けば……。

◆健康診断は「5年連続D判定」で済んだ。済んだ?


コロナも終息しかけた頃には筆者も28歳になり、雑誌という斜陽産業に新入社員は入らないため、最年少の下っ端には変わりないが、ようやく原稿も整い出した。なんだったら先輩たちにダメ出しできるほど成長……。いや、ただ面の皮が厚くなっただけだ。

それでも、自分の原稿に対する「ダメ出しされるかもしれない」というプレッシャーは大幅に減ったため、校了期間中かつてほどのストレスは感じなくなった。むしろ、「もっと良いものを作ろう」と前向きだった。

ただ、筆者が入社した頃から編集部は随分と変わった。隔月誌になったのもそうだが、何人かの先輩編集者たちは卒業していき、結果的に5人以下の少数精鋭となり、任されるページ数も増えた。百何ページの雑誌で1折半(24ページ)をひとりで、号によっては2折り(32ページ)担当するときもあった。

卑屈な自分にとってみれば、これは自信につながり、何本も企画を任されることが自己肯定感につながった。土日、ゴールデンウィーク、盆暮正月も休みなく、毎日働いていたが、辛いと感じたことはなく、むしろ楽しかったのだ。いや、さすがにゴールデンウィークが一切なかったのはキツかったか……。

とはいえ、仕事以外にこれといった趣味はなかったため、常に忙しさだけを求め、そして昼から深夜まで馬車馬のように働き、一通り仕事を片付けてから就寝前1時間でストロング系を5本ガブ飲みするが「快楽」だった。

ここで「疲れた」と思って辞めてしまうと、学生時代に味わった漫画喫茶に戻らなくてはいけない……。極端な考え方だが、むしろそれがモチベーションとなり、ますます仕事にのめり込むようになった。

あと、デタラメなアルバイト先だったが、漫画喫茶は接客業なので忙しくて楽しかったし、漫画は出版社ごとに棚に並べられているため、版元の傾向を掴むこともできた。良くも悪くも働いた意味はあった。

このように「働き甲斐」を明確に感じられるようになったが、徐々に体は蝕まれていった。

年に1回は会社の福利厚生で健康診断を受けられたのだが、基本的に肝臓と体重以外は問題なかった。肝臓は入社から何年経ってもD判定だった。ただ、20代中盤でもγ-GTは100を超えているくらいだったため、医者からも「気を付けてくださいね」と言われる程度で、筆者もそこまで重く捉えてなかった。

「大人は毎晩お酒を飲んでいるんだから、肝臓能値も糖尿病も40歳くらいまでは大丈夫かな」

そんな甘い考えで健康診断の前日も酒を飲み、焼肉か中華料理を食らい、タバコを吸っていたため、結果は5年連続D判定で済んだ。まだ、この頃は「習慣飲酒」なだけで、「連続飲酒」ではなかったため、そこまで身体に響かなかったのだろう。毎晩、ストロング系を5本も飲んでいたわけだが……。

そのため、ストレスチェックで異常値が出たのと、たった1年で30キロ体重が増えたことで産業医には目を付けられていた。毎度のことかもしれないが「あのとき、真剣に相談していれば……」とは、後の祭りだ。

1日1食の食生活も健康的とはいえないが、日中に食欲が沸かないのだから、どうしようもない。真夜中にたらふく食べているため、24時間経たないと腹が減らないのだ。

例えばランチ・ミーティングなどが入ると、まだ胃の中には前日の酒と消化しきれていない食べ物で満たされていたため、苦痛に感じることもあった。というか、朝も起きられないので、正午から始まるイベントはだいたい不調の中、参加していた。

そのくせ、コロナ禍で牛丼屋も時短営業となってしまうと、最終的に丸1年間マクドナルドのハンバーガーを晩御飯として食べていたため、もはや己の意思で身体を壊していた気もする。

ただ、ジャンクフードとストロング系というのは食い合わせがいいのだ。カスの『孤独のグルメ』である。


配信元: 日刊SPA!

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