銀行員「毎日20万円の不審な引き出しが続いており…」実家で電話をとった55歳男性の絶望。認知症の父の財産が“凍結”となった〈まさかのワケ〉【司法書士が解説】

銀行員「毎日20万円の不審な引き出しが続いており…」実家で電話をとった55歳男性の絶望。認知症の父の財産が“凍結”となった〈まさかのワケ〉【司法書士が解説】

「家族だから大丈夫」は通用しない現実

Aさんのようなケースは決して珍しくありません。「家族なのだから、暗証番号さえ知っていれば親の預金を下ろしてもそれほど問題にならない」と安易に考えている方は非常に多いのが実情です。

しかし、実務の現場から見ると、この「それほど問題にはならない」と思われているカードの使い回しには、取り返しのつかない大きなリスクが潜んでいます。

「毎日ATM」は不正監視システムで弾かれる

老人ホームの入居一時金など、急遽数百万円単位の資金が必要になった場合、ATMだけで対応するのは現実的ではありません。

Aさんのように連日上限額まで引き出しを続けると、本人が高齢であるにもかかわらず不自然な高額出金が連続したとして、金融機関の不正検知の対象となることがあります。セキュリティの観点から口座が強制的にロックされ、窓口で本人の意思確認を行わない限り、引き出せなくなる事態に陥るのです。

家族間のトラブルと銀行の「預金規定違反」

親族間のトラブルや法律上のリスクも見過ごせません。親の了承を得て引き出していたとしても、明確な記録が残っていなければ、相続の際に「認知症で判断能力が乏しい時期に、勝手に引き出したのではないか」と他の親族から疑われやすくなります。

さらに根本的な問題として、金融機関の規定では、カードの譲渡や暗証番号の開示は家族間であっても原則として明確に禁止されています。平時は黙認されていても、万が一、盗難や詐欺の被害に遭った場合、「家族にカードを渡していた」ことが判明すると預金者側の過失とみなされ、補償が大きく減額されるか、一切受けられなくなるリスクがあります。

代理人カードも「認知症発症後」は使えない

「親が元気なうちに銀行で『代理人カード』を作っておけばいいのでは?」と考える方もいるでしょう。たしかに便利な仕組みですが、万能ではありません。

銀行の代理人カードは、あくまで「本人は頭がしっかりしているが、足腰が弱くて銀行に行けない」状態を想定したものです。本人が認知症等で判断能力を失ったことが客観的に明らかになった場合、代理人カードの利用も停止されます。

親の口座凍結を防ぎ、安全に介護費用を用意するには

親の口座凍結を防ぐためには、ご家庭の状況に合わせた事前の枠組みづくりが必要になります。代表的な対策としては、大きく分けて2つの方向性があります。

一つは、一部の銀行が提供している「予約型代理人サービス」などの活用です。これは親が元気なうちに家族を将来の代理人として登録しておく仕組みです。

あらかじめ登録しておくと、将来、認知症と診断された際に、銀行所定の診断書などを提出すれば、その銀行の口座に限って家族が引き出しを行えるようになります。ただし、利用できる銀行が限られ、実家の売却などには対応できないという制限はありますが、費用を抑えて「当面の生活費や介護費の引き出し口」を一つ確保する手段としては有効です。

もう一つは、より包括的な対策である「家族信託(民事信託)」です。

親が元気なうちに、特定の預金だけでなく、実家などの不動産の管理権も信頼できる家族に託しておく仕組みです。現金や実家の売却を一元管理できるため、「将来、施設入居費が足りなくなったら、空き家になった実家を売却して費用に充てる」といった柔軟な資金繰りが可能になります。

「費用を抑えた手軽な代理人サービス」から始めるか、「将来の変化に対応できる家族信託」を組むか。他にもさまざまな対策方法がありますが、ご家族の資産状況や方針に合わせて選ぶことが大切です。

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