◆「聞く力」を支える相手への尽きない好奇心

「共通しているのは、相手が何を伝えれば喜ぶかを常に考えていることです。著書や過去の記事、動画配信で予習し、どのような価値観を持っているのかまで想像を巡らせる。その上で、一人ひとりの楽屋をまわって、衣装につっこんだり、『ご著書のあの部分、面白かったです』と伝えたり、専門分野の最新動向などを聞いたりと、さりげないコミュニケーションを大切にしています。本当にそれだけです」
舞台裏で積み重ねる執念に近いインプットもまた、黒木氏の聞く力を支えている。
「番組に携わって7年。当初は政治・経済を筆頭に、様々な分野の知識が乏しく、2週間に一度の収録に向けて必死に本を読み漁る日々を過ごしました。今では、『どの考えや質問をぶつけたら議論が立体的になるか』という設計図(イメージ)がおぼろげに見えてくるようになってきました。あと、次の収録のテーマは衆議院選挙の総括なんですが、議論が枝葉末節に終始した際に、『そもそも日本におけるリベラルとは』と突っ込めるように、扱うテーマのそもそも論は必ず押さえています」
『あなたに敬意を持っています』という姿勢を可視化する、当たり前の積み重ね。それこそが、癖が強すぎるおじさんたちの懐に飛び込むための作法と言えよう。
「団地で育ったおかげか、知らない大人の懐に飛び込むのに抵抗が少なかったのかもしれません。それに、年齢や地位を問わず、誰もが私の知らない“未知”を持っている。それを聞くのが本当に好き。それが昔の武勇伝でも面白いし、学生時代の話題だっていい。特に個性的なおじさまは、知識と知恵を授けてくれる『宝箱』みたいな存在。情報量が多くてお腹いっぱいだなと思ったら、そっと距離を取って小休憩を挟めばいいんですよ」
周囲の友人からは“目につく”と評される自身のキャラクターを、「ただのポンコツ」と笑い飛ばす黒木氏。彼女が指摘するように、職場の癖強おじさんも、見方を変えれば「宝箱」なのかもしれない。明日からの会議、まずは一歩深く相手を知ることから始めたい。
アナウンサー
黒木千晶氏
1993年、神奈川県生まれ。青山学院大学卒業後、2016年に読売テレビ入社。現在は『そこまで言って委員会NP』の議長を担当する。報道からバラエティまでこなす安定したアナウンス技術に加え、どんな大物論客にも物怖じしない度胸と、笑顔で鋭く切り込む「いなしの技術」に定評がある。
(編集・文/谷口伸仁、カメラマン/小澤勇佑)

